光る君へのあらすじとライターのつぶやき

光る君へ42話 川辺で交わした新たな約束 - ホームメイト

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こんにちは!刀剣ワールドライター・さららです。2024年(令和6年)11月3日(日曜日)に放送されたNHK大河ドラマ「光る君へ」の42話「川辺の誓い」は、「藤原道長」(ふじわらのみちなが)が病に倒れ、「まひろ/紫式部」(むらさきしきぶ)が見舞い、2人が新たな約束を交わすという感動的な展開となりました。そんな「光る君へ」の42話について、インターネットで話題となったテーマを中心に掘り下げます。なお、次回43話「輝きののちに」のネタバレも含みますのでご注意ください。

絶望から新たな約束へ

生きることを約束した2人

藤原道長

藤原道長

重病の藤原道長を見舞いに来たまひろは、少年少女だった頃と同じように、川辺を歩きます。しかし、病を患い、歳を重ねて人生の辛苦を味わった現在の藤原道長の姿には、もうあの頃のような無邪気さは見られません。

藤原道長は、「早めに終わってしまった方が楽だと言うおまえの言葉が、分かった」と、厭世的な言葉を呟きます。一方、まひろも「私も、もう終えてもいいと思っておりました」と返答したのです。

しかし、藤原道長は、愛するまひろには生きて欲しいと思ったのでしょう、「おまえは、俺より先に死んではならぬ。死ぬな」と言います。まひろが「ならば、道長様も生きてくださいませ。道長様が生きておられれば、私も生きられます」と応じると、藤原道長は思わず涙をこぼしました。これまで強引とも思える手腕で政治を行ってきた藤原道長が、まひろの前で涙を流したことで、感動を呼ぶシーンとなったのです。

なお、インターネットでは、「俺より先に死んではならぬ」という言葉が、歌手の「さだまさし」さんのヒット曲「関白宣言」を想起させたようで、「左大臣なのに、まさかの関白宣言」と盛り上がりました。

厭世観が「宇治十帖」へ昇華

匂宮と浮舟 月耕「源氏五十四帖 五十一 浮舟」

匂宮と浮舟
月耕「源氏五十四帖 五十一 浮舟」

京へ戻ったまひろは、「光る君がお隠れになったあと、あの光り輝くお姿を受け継ぎなさることのできる方は、たくさんのご子孫のなかにもいらっしゃらないのでした」から始まる、「源氏物語」の「宇治十帖」(うじじゅうじょう)を書き始めます。

42話で表現された厭世的な世界観はまさに、宇治十帖に繫がるものではないでしょうか。宇治十帖は、これまでの源氏物語とは異なる世界観を持つ物語です。「光源氏」(ひかるげんじ)の子「薫」(かおる)と、帝の第3皇子「匂宮」(におうのみや)という2人の貴公子が、宇治の地を舞台に繰り広げるのですが、かつての光源氏のような華やかな恋愛模様は見られず、その代わりに仏教的・哲学的な深みが見られます。

主人公の薫は光源氏の息子ですが、実の父は「柏木」(かしわぎ)という男性であり、自身の出生の秘密に悩む、影を持つ人物。光源氏のように何をさせても完璧なヒーローではなく、登場時から厭世観に囚われています。

薫と匂宮は、「浮舟」(うきふね)という女性を巡って取り合いになるのですが、この浮舟も、光源氏の最愛の妻である「紫上」(むらさきのうえ)のような完璧な女性ではなく、やや意志の弱い、ごく普通の人間。浮舟は2人から愛され、苦悩の果てに宇治川へ身を投じますが、僧侶に救われ、出家して仏道を歩み始めます。意志の弱かった浮舟は、ここで一変。男性に振り回されることのない穏やかな人生を自らの意思で選び取ったのです。

「光る君へ」のまひろがこのような物語を書いたと想像すると、藤原道長の秘めた覚悟や辛さをまひろが間近で見たこと、まひろ自身も味わった弟「藤原惟規」(ふじわらののぶのり)の死などの人生経験を、宇治十帖として昇華させたと捉えることができますね。

ひと言で心を射抜く双寿丸(43話のネタバレあり)

まひろが実家に帰ると、娘である「藤原賢子」(ふじわらのかたこ)が怪我をした「双寿丸」(そうじゅまる)を連れて来ました。双寿丸を藤原賢子の相手としてふさわしくないと考えている「いと」が、「そのような怪我をしているのに、わざわざここまで来なくても」と嫌味を言うと、双寿丸は「あんたの飯がうまいから」とさらりと返答。いとは、「まっ!口がうまいこと!」と言いつつも、嬉しそうでした。たったひと言で、いとの心を和らげる双寿丸はなかなかですね!

しかし、次回予告では「来年、大宰府に行く」と、双寿丸が藤原賢子に伝えるシーンが見られました。大宰府とは、九州の筑前国(現在の福岡県)に設置された地方行政機関です。42話の数年後、九州では「刀伊の入寇」(といのにゅうこう)という日本を揺るがす大事件が起こるので、双寿丸の出発はそのための伏線だと思われます。

刀伊の入寇とは、1019年(寛仁3年)に起こった外国の海賊による九州地方への侵攻のことで、この事件で大活躍を見せるのが、「藤原隆家」(ふじわらのたかいえ)です。そのため双寿丸同様、藤原隆家も大宰府へ下るものと予想されます。

そう考えると、大河ドラマとしては珍しく戦のシーンがない「光る君へ」でしたが、近々戦の場面が登場して、これまでとは違う雰囲気が味わえるかもしれませんね。

次回43話「輝きののちに」の予告では、「お目が見えず、お耳も聞こえておられない」、「ご譲位を願い奉るのですね」との語りがあり、藤原道長と67代「三条天皇」の間でのさらなる波乱が予想されます。また、藤原賢子と双寿丸の関係がどうなるのかなど、来週の「光る君へ」も目が離せません。

【国立国会図書館デジタルコレクションより】

  • 月耕「源氏五十四帖 五十一 浮舟」
大河ドラマ歴史年表(歴代別/時代別)
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2024 大河ドラマ「光る君へ」
2024年(令和6年)放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」のあらすじやキャストをご紹介します。