光る君へのあらすじとライターのつぶやき

光る君へ 37話「波紋」 - ホームメイト

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こんにちは!刀剣ワールドライター・さららです。2024年(令和6年)9月29日(日曜日)に、NHK大河ドラマ「光る君へ」の37話「波紋」が放送されました。36話では、中宮「藤原彰子」(ふじわらのあきこ/しょうし)が「敦成親王」(あつひらしんのう)を出産。その祝いの席で、「藤原道長」(ふじわらのみちなが)が不注意から、「まひろ/紫式部」(むらさきしきぶ)との仲を疑われるきっかけを作ってしまいます。37話では、藤原彰子付きの女房みんなで協力して、「一条天皇」に献上する豪華本を作る様子や、藤原道長の次の東宮への思惑と、それに戸惑うまひろの様子などが描かれました。
大河ドラマ歴史年表(歴代別/時代別)
これまで放送された大河ドラマ、及び今後放送予定の大河ドラマを一覧で見ることができます。
2024 大河ドラマ「光る君へ」
2024年(令和6年)放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」のあらすじやキャストをご紹介します。

あらすじ(2024年9月29日放送)

中宮・藤原彰子がついに一条天皇の皇子、敦成親王を出産。待ちに待った孫の誕生に、藤原道長とまひろは喜びを分かち合います。そんな2人の親密さが噂になる中、藤原彰子は、まひろの書いた「源氏物語」を冊子にし、一条天皇に献上したいと提案。まひろと女房達は、心をひとつにして、最高の書物を制作することになりました。

しばらくして、まひろは、藤原彰子の許しを得て里帰りをします。そして、久しぶりに会った家族に、藤壺での華やかな生活や中宮の出産話を得意げに話しました。そんなまひろに対し、娘の藤原賢子は、「何をしに戻ってきたのか」と怒りをぶつけます。さらに藤原賢子は、「実家よりも宮中での暮らしの方が楽しいのだろう」と言い放ち、家を飛び出してしまいました。

新たな皇子の誕生によって、中関白家(なかのかんぱくけ)の再興を目指していた藤原伊周の思惑が外れ、さらに藤原道長と藤原伊周の権力闘争が激化します。このままでは、藤原定子の皇子、敦康親王の権威が失われてしまうと焦った藤原伊周は、藤原道長を呪詛。その後、藤壺には賊が入り、藤原彰子の女房達が襲われる事件が起きました。藤原道長は、藤壺襲撃の際に真っ先に藤原彰子のもとへ駆けつけてきたまひろに感謝し、「これからも、中宮様と敦成親王様をよろしく頼む。敦成親王様は、次の東宮様となられるお方ゆえ」と語ります。敦康親王と敦成親王のどちらが次の東宮(天皇の後継者)になるかをめぐる不穏な空気が漂う中、藤原道長の言葉は、まさに秘められていた野心そのもので、失言でもありました。藤原道長は、すぐに「ただの賊ではないやもしれぬ」と取り繕います。

一方、ききょうが藤壺を訪ねてきました。久しぶりのききょうとの再会にまひろは笑顔で迎えます。しかし、「光る君の物語を読みました」と話すききょうを見て、まひろの顔から笑顔が消えていくのでした。

ライターのつぶやき「次の東宮を巡る波紋」

次の東宮擁立に波紋

藤原道長の野望

敦康親王

敦康親王

1008年(寛弘5年)の暮れ、藤原彰子の住む内裏「藤壺」(ふじつぼ)に盗賊が入るという事件が発生。藤原彰子の身を案じたまひろがひとりで駆け付けると、そこには着物を奪われた女房2人の姿がありました。

幸い深刻な被害はありませんでしたが、翌日、まひろの懸命な働きを知った「藤原道長」は、「これからも中宮様と敦成親王様をよろしく頼む。敦成親王様は次の東宮となられるお方ゆえ」と告げたのです。まひろは、「次の……」と呟いたきり、絶句します。

66代「一条天皇」(いちじょうてんのう)が、かつて深く愛した「藤原定子」(ふじわらのさだこ/ていし)の遺児である「敦康親王」(あつやすしんのう)を次の東宮に望んでいることに、まひろは当然気付いているはずです。また、第1皇子である敦康親王を退けて無理に敦成親王を東宮にすれば、公卿達から反感を買うことも理解しているでしょう。その上で、藤原道長が敦成親王を東宮にしようとしていることに、まひろは藤原道長の野心のようなものを感じ取ったように見受けられました。ひょっとすると、かつて藤原道長が反発していた父「藤原兼家」(ふじわらのかねいえ)の姿を、藤原道長に重ねて見たのかもしれません。

後日まひろが、藤原道長から贈られた檜扇(ひおうぎ)を見つめていたのは、その扇に描かれた少年時代の藤原道長の純粋さを懐かしんでいたからではないでしょうか。

藤原彰子の威厳と慈悲

藤原彰子

藤原彰子

大人しくて意思をはっきりと示すことすらできなかった以前とは別人のように、しっかり意志を持つようになった藤原彰子は、今回発生した強盗事件でも、凛とした頼もしさを見せました。

事件翌日の、まひろから藤原道長への説明によると、藤原彰子は衣をはぎ取られた女房達のために、みずから袿(うちぎ)を持ってきたよう。まひろは、「上に立つお方の威厳と慈悲に満ち溢れておいでで、胸打たれました」と感動した様子でした。

頼もしく成長した藤原彰子ですが、反面、自らの意志を持つ存在になった以上、父・藤原道長の思い通りには動かなくなる可能性があります。藤原道長が藤原定子の遺児である敦康親王を藤原彰子に育てさせたのは、藤原彰子に子供ができなかった場合の「保険」でした。とは言え、藤原彰子は愛情をもって敦康親王を養育し、2人の間には特別な絆ができています。

しかし、藤原彰子の子である敦成親王が誕生した今、敦康親王は藤原道長にとって障害とも言える存在になりつつあるのです。藤原道長は今後、敦康親王を退け、敦成親王を次の東宮に据えるための動きを見せるのでしょうが、それに対して藤原彰子がどのような対応をするのか、気になるところですね。

強盗事件

ところで37話で描かれた強盗事件は実際に起こったことらしく「紫式部日記」の1008年(寛弘5年)12月30日条にも『大みそかの夜、中宮様(藤原彰子)がいらっしゃるお部屋の方角からものすごい悲鳴が上がった。「内匠の君」(たくみのきみ)という女蔵人を先に立たせて、「弁の内侍」(べんのないし)という女房を乱暴にたたき起こし、3人してぶるぶると震えながら中宮様の様子を見に行くと、裸の女性が2人うずくまっていて、引きはぎにあったと事情が分かった。中宮様(藤原彰子)は、納殿(おさめどの)にある衣装を取り出させて、被害にあった2人の女房に賜った』といったことが書かれています。

37話とは異なり、まひろが単独で藤原彰子のもとに行ったのではなく、別の女性を先に立たせたと記載されているのは興味深いですね。

まるで直秀の生まれ変わり?双寿丸

藤壺に盗賊が入った夜、「鬼やらへ~。退散なさしめたまへ~」と、お面をかぶった男性が叫ぶ場面がありました。これは、追儺(ついな)と言って、大晦日に、方相氏(ほうそうし)と呼ばれる人が内裏を歩き回り、鬼(疫鬼や疫神)を退治する行事です。節分に鬼を払う豆まきのルーツになった行事とも言われています。

37話ではその方相氏が、盗賊が捨てた女房の着物を拾い上げ、顔の前の面を上げたのです。かつて「直秀」(なおひで)という男性が、昼はお面をかぶった散楽の一員、夜は貧しい人々のために働く義賊として活躍していましたが、この男性はその直秀を彷彿とさせる姿をしていたのが印象的でした。

この男性も直秀と同様に架空のキャラクターで、「双寿丸」(そうじゅまる)という名前の若武者のようです。双寿丸が「光る君へ」の物語にどうかかわっていくのか、今後の展開が気になりますね。

「罪」と「罰」が暗示するものとは

深まる娘・藤原賢子との溝

藤原彰子が土御門邸に里下がりしている間、藤原彰子と女房達は天皇に献上するための豪華本を作っていましたが、本が完成すると、まひろは一度実家へ里帰りしたいと藤原彰子に申し出ました。

無事に許可されて実家へ帰ったまひろでしたが、久しぶりに再会した娘「藤原賢子」(ふじわらのかたこ)は、どこかよそよそしい態度。さらに、まひろが実家でくつろぎながら酒を飲み、宮中の話を楽しげにすると、藤原賢子はますます母に対して引いてしまう様子でした。

その夜、まひろが「罪」、「罰」といった文字を書いていると、母の姿を御簾越しに見る藤原賢子の描写があったのです。藤原賢子としては、執筆を邪魔してはいけないと思ったのでしょう、さみしさを飲み込んだように、何も言わずに部屋に下がります。

しかし、藤原彰子からの要望により、まひろが早々に土御門邸へ戻ると聞くと、行き場を失くした感情が爆発。「母上はここよりあちらにいる方が楽しいのでしょう?」、「噓付き!母上なんか大嫌い!」と、まひろに感情をぶつけます。

まひろが仕事に力を注ぎ過ぎて、娘に十分に向きあってこなかったのが「罪」であり、その結果として娘とのすれ違いという「罰」となって返って来ていると、暗示されているのでしょうか?しかし、まひろは家計を支えている立場でもあるので、仕方のない面もあります。この状況は、現代の家族にも通じそうなエピソードですね。

光源氏の罪と罰

まひろが書いていた「罪」、「罰」という文字は、これから書かれる「源氏物語」の第2部の構想だと考えられます。

一条天皇に献上された33帖の最後では、光源氏の様々な問題が解決し、光源氏が准太政天皇(じゅんだいじょうてんのう:皇位を後継者に譲った天皇に准じる待遇)となる、大団円で終わるのですが、一般的には源氏物語の33帖までは第1部とされ、この先の第2部では、光源氏の栄光の先にある苦悩が描かれるのです。

青年期には継母(ままはは)である「藤壺」(ふじつぼ)と密通の末、不義の子をもうけた光源氏でしたが、今度は光源氏の新しい妻で、皇女でもある「女三宮」(おんなさんのみや)が「柏木」(かしわぎ)という若い男性と恋に落ち、不義の子を身籠もります。

さらに、女三宮の存在により、光源氏の最愛の妻である「紫上」(むらさきのうえ)との心のすれ違いも深まるのです。

源氏物語が単なる「めでたしめでたし」で終わらず、人間の因果応報を描いている点がユニークで、紫式部の作家としての意気込みも感じられますね。

さて、37話でまひろは娘である藤原賢子との溝を修復できないままでしたが、次回の38話「まぶしき闇」では、こじれた母娘関係は解消するのでしょうか。また、まひろの前に現れ、「光る君の物語、読みました」と告げた清少納言が、どのような言葉をまひろに投げかけるのかなど、来週の「光る君へ」も目が離せません。