光る君へのあらすじとライターのつぶやき

光る君へ 27話「宿縁の命」 - ホームメイト

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こんにちは!刀剣ワールドライター・さららです。2024年(令和6年)7月14日(日曜日)に、NHK大河ドラマ「光る君へ」の27話「宿縁の命」が放送されました。26話で、新婚早々「藤原宣孝」(ふじわらののぶたか)は「まひろ/紫式部」(むらさきしきぶ)を訪れなくなり、まひろは石山寺詣に出かけます。27話では、石山寺(滋賀県大津市)で思いがけず「藤原道長」(ふじわらのみちなが)と再会し、新たな運命が動き出す様子が描かれました。
大河ドラマ歴史年表(歴代別/時代別)
これまで放送された大河ドラマ、及び今後放送予定の大河ドラマを一覧で見ることができます。
2024 大河ドラマ「光る君へ」
2024年(令和6年)放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」のあらすじやキャストをご紹介します。

あらすじ(2024年7月14日放送分)

石山寺で再会したまひろと藤原道長は、会わずにいた間、お互い、どのように過ごしていたかについて語り合いました。そして、別れ際になり、藤原道長は、「もう一度自分のそばで生きることを考えてほしい」とまひろに伝えます。しかし、まひろは、藤原道長の気持ちをそっと断るのでした。

3月になり、安倍晴明の予言していた通り、中宮・藤原定子が一条天皇の子を懐妊します。しかし、藤原道長の妻・源倫子は、娘の藤原彰子こそが内裏を仕切る后になるのだと意気込み、源倫子と藤原彰子の女房である「赤染衛門」(あかぞめえもん、演:凰稀かなめ[おうきかなめ])に、「藤原彰子に華やかさと明るさを身に付けさせてほしい」と頼みました。

一方、藤原宣孝が久しぶりにまひろのもとへ訪れます。藤原宣孝は、11月に行われる賀茂の臨時祭で、神楽の人長(にんじょう:行事の進行役)を務めること、「宇佐八幡宮」(うさはちまんぐう:大分県宇佐市)の奉幣使(ほうへいし:奉幣のために陵墓や神社などに参向する使者のこと)として豊前(ぶぜん:現在の福岡県東部)に行くことをまひろに伝えました。まひろは、「己を貫くばかりでは、誰とも寄り添えない」という言葉を思い出し、素直にお祝いの言葉を述べます。そして、2人は笑いあって、ようやく復縁するのでした。

9月のある日、内裏の清涼殿では、安倍晴明が一条天皇に、藤原彰子の入内について説明します。一条天皇は、藤原定子の出産と入内の日が近いことを思い悩みますが、公卿の多くは、藤原彰子の入内を歓迎。藤原道長は、藤原彰子の入内を盛り上げるために、公卿達が詠んだ歌を屏風に貼り、内裏に持ち込むことを思い付きます。そうすることで、公卿達が藤原道長を支持していることの証になり、一条天皇も藤原彰子に一目置くと考えたからです。予定通り、藤原彰子は11月1日に入内。その6日後、藤原定子が出産します。

藤原定子が皇子を生んだ11月7日は、藤原彰子の女御(にょうご:皇后や中宮の下位)宣下の日でもありました。

このところ体調がすぐれない藤原道長は、運の陰りだと憂いますが、安倍晴明は、何の問題もないとし、藤原彰子を中宮にするように勧めてきます。1人の天皇に2人の妻がいる事態に、藤原道長は驚きますが、安倍晴明は、「一帝二后」(いっていにこう)によって藤原彰子の力は強まり、藤原道長の体調も治ると断言。藤原道長は、この件を藤原行成に相談します。藤原行成は、「朝廷の安寧のためなら、先例がなくてもかまわない」と答えるのでした。

この年の暮れ、藤原道長と源倫子の間に、のちの「後一条天皇」(ごいちじょうてんのう)の中宮となる「藤原威子」(ふじわらのたけこ)が生まれます。そして同じ頃、まひろもひっそりと娘を生んだのでした。

ライターのつぶやき「石山寺の逢瀬でまさかの妊娠」

宿縁で授かった命

石山寺での逢瀬

藤原道長

藤原道長

石山寺で偶然再会したまひろと藤原道長は、昔の話や越前国(現在の福井県北東部)での様子などを語り合います。

その後、一度は平静を装ったまま別れようとしましたが、このままでは別れられないと思い直したのでしょう。藤原道長は思いつめた表情で駆け戻り、逢瀬を遂げます。

愛を交わしたのちに、藤原道長はまひろに「いま一度、俺のそばで生きることを考えぬか?」と提案しますが、やんわりと断られてしまいました。

理由は語られませんでしたが、やはり、まひろがすでに、藤原宣孝と結婚していることが大きな要因だと考えられます。もし藤原宣孝と別れて、藤原道長に乗り換えたりすれば、世間の噂にもなりますし、藤原宣孝や父・「藤原為時」(ふじわらのためとき)の顔に泥を塗ることにもなりかねません。また、家を捨てて藤原道長と一緒になれば、藤原道長の愛だけが頼りの関係になってしまいます。心から愛する藤原道長だからこそ、そのような妾になるのは耐えられないと思ったのでしょう。

このように、様々な障害を考えると、まじめなまひろにとって、「藤原道長とともに生きること」はできない選択だったのだと思われます。

不義の子を妊娠するまひろ

まもなくまひろの妊娠が発覚。藤原宣孝は喜びますが、逆算すると石山寺での逢瀬で授かった子に間違いありません。不義の子を妊娠したまひろが夜半、月を見ながら「このまま黙っているのも罪深い」と思い悩む様子は、「源氏物語」に出てくる「藤壺」という女性の姿と重なるように見受けられました。

藤壺

藤壺

源氏物語には不義密通が繰り返し登場するのですが、もっとも象徴的なヒロインは、「藤壺」(ふじつぼ)という女性。藤壺は、恋多き光源氏にとっても「原点にして頂点」と言える恋人です。

藤壺は、光源氏の実父である「桐壺帝」(きりつぼてい)の寵愛を受ける后であり、光源氏にとっては継母でもあったため、2人の関係は絶対に公(おおやけ)にはできないものでした。しかし光源氏の、藤壺に対する愛執は深く、ついに藤壺との間に男児をもうけます。桐壺帝は、藤壺が産んだ皇子が自分の子ではないと気付いていたようですが、「瑕なき玉」と呼んで溺愛しました。一方で藤壺は罪の意識を、生涯抱え続けることになったのです。

懐の深い藤原宣孝

まひろが「藤壺」であるとすれば、藤原宣孝は「桐壺帝」に相当するかもしれません。藤原宣孝は、別れを申し出たまひろに対して「そなたの産む子は誰の子でもわしの子だ。何が起きようともお前を失うよりは良い」と言い切り、まひろへの深い愛情を見せます。その上、「左大臣様は、ますますわしを大事にしてくださるだろう。持ちつ持たれつじゃ」と、自分の出世への利点を語ったのは、まひろの罪悪感を軽くするための口実のように見受けられました。

藤原宣孝には、まひろの他に妻が複数人いますが、それを差し引いても、寛大な男性には違いありません。ただ気になるのは藤原宣孝の、睡眠時無呼吸症候群らしき症状が描かれていた点です。これが藤原宣孝の健康状態に影を落とすかもしれないと思うと、少し心配になります。

紫式部の娘

27話の最後で、まひろは無事に赤ちゃんを出産しました。史実と照らし合わせると、この赤ちゃんは「藤原賢子/大弐三位」(ふじわらのかたこ/だいにのさんみ)と呼ばれる女児でしょう。

一般的には、藤原賢子の実父は藤原宣孝である、という見方が優勢のようですが、「光る君へ」と同様に、藤原道長が実父だという説もあるのです。

そこで、藤原賢子自身の人生から、どちらが実父なのか探ってみたいと思います。成長した藤原賢子は多くの恋愛をしたようです。この点を踏まえると、藤原宣孝の血を受け継いでいるように思えます。

その一方で、藤原賢子は天皇の乳母となり、出世して従三位(じゅさんみ)に叙せられました。三位と言えば、男性であれば台閣(たいかく:内閣)クラスの公卿に相当する高位。

まひろの父の藤原為時が、越前守(えちぜんのかみ)になる時に、ようやく従五位下(じゅごいのげ)を与えられたことを考えると、受領(ずりょう:諸国の長官)クラス出身の娘に、従三位を与えられることがどれだけ異例の待遇だったか分かります。母である紫式部の名声もあったでしょうが、藤原賢子の実父が藤原道長であり、その意向が働いたとも推測できそうです。

入内にまつわる波乱

藤原公任の屏風歌

藤原公任

藤原公任

藤原道長は、娘である「藤原彰子」(ふじわらのあきこ)の入内(じゅだい)に際し、屏風歌(びょうぶうた)を作ることを思い付き、公卿達に歌を依頼しました。

藤原道長は、一級の文化人であった「藤原公任」(ふじわらのきんとう)にも歌を依頼。その際のエピソードが、説話集「今昔物語集」(こんじゃくものがたりしゅう)に載っています。

それによると、藤原公任はその和歌を披露する集まりに遅参した上に、「満足ゆく歌が作れません。つまらぬ歌なら、奉らないほうがましです」と言って、辞退を申し出ました。さらに、「他の方の歌もまだ名歌はないようです。それらの歌が取り上げられず、取るに足らぬ私の歌が書かれては、私は長く汚名を流すことになりましょう」など、謙遜するふりをして、他の人を貶める発言までします。

ただ、「今昔物語集」は歴史書ではなく伝承をもとにした説話集なので、こういったエピソードはあくまで物語として楽しむのが良いのかもしれません。とは言え、提出した入内屏風の歌は素晴らしい作品でした。

「紫の 雲とぞ見ゆる 藤の花 いかなる宿の しるしなるらむ」

<現代語訳>紫色の雲に見えるほど美しい藤の花は、どのような素晴らしい家の目印でしょうか。

27話の紀行コーナーでも紹介されていたように、藤原氏を象徴する藤の花を題材に詠まれています。また藤原彰子の御殿であった、御所の飛香舎(ひぎょうしゃ)は、庭に藤の木が植えられていたことから藤壺と呼ばれていました。

今後の藤原道長・藤原彰子の繁栄ぶりをあらかじめ祝うとともに、「藤壺」という名の女性が登場する偉大な文学作品「源氏物語」の誕生を、予感させる歌に思えます。

安倍晴明の奇策

藤原彰子の入内と同時期に、中宮「藤原定子」(ふじわらのさだこ/ていし)が出産しました。産んだ子が男児だったことにより危機感を募らせる藤原道長に対し、「安倍晴明」(あべのはるあきら/せいめい)は「女御様[藤原彰子]を中宮になさいませ」とアドバイスします。藤原定子を皇后にし、空いた中宮に藤原彰子を入れれば良い、と言うのです。

この説明を聞くと、まるで皇后が上位で中宮がその下の位のように思われるかもしれませんが、本来、中宮とは皇后の別称でした。

ですから、いくら藤原定子を皇后にしたところで、藤原彰子を中宮にすれば、ひとりの天皇に対して后が2人という、異常な事態になることに変わりはありません。安倍晴明の提案は、前例のないものだったのです。それを踏まえると、藤原道長が戸惑う気持ちも分かります。

このように周囲からのあらゆる思惑を背負わされた藤原彰子ですが、次回28話「一帝二后」では、どのような展開が待っているのでしょうか。また、母となったまひろの様子など、次回の「光る君へ」も目が離せません。