刀剣を鑑賞する

刀剣の姿とは

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「刀剣の姿」とは、「体配」(たいはい)とも呼ばれる、「鋒/切先」(きっさき)、「身幅」(みはば)、「反り」、「長さ」など、刀剣全体の形状を総称した言葉のこと。刀身(とうしん)の「茎」(なかご:柄[つか]に収める部位)以外の、鋒/切先から棟区(むねまち:茎と棟[むね:刃と反対側の、物を切ることができない部位]の間にあるカギ形にくぼんだ箇所)までを指しており、各部位には様々な形状・特徴が存在。「刀剣の姿」各部位の種類とその特徴をご紹介します。

鋒/切先

鋒/切先とは

鋒/切先

鋒/切先」(きっさき)とは、刀剣の先端部のこと。具体的には、「鎬筋」(しのぎすじ:刀身の側面、刃との間にある山高くなっている筋のこと)と、「横手」(よこて:鋒/切先の下部に入る、刃から棟に引かれた境界線)が交わる「三つ頭」(みつがしら)より上の先端部を指しており、刀身のなかでも最も美しい部分として知られています。

その長さや形状によって、「かます鋒/かます切先」、「小鋒/小切先」、「猪首鋒/猪首切先」(いくびきっさき)、「中鋒/中切先」、「大鋒/大切先」の5種が存在。

鋒/切先の変化

かます鋒/かます切先

かます鋒/かます切先とは、5種のうち最も小さく、また最も古い時代に作刀されていた鋒/切先のこと。

ふくら」(鋒/切先の刃側の曲がり具合)を見たときに、膨らみが浅いことを示す「ふくら枯れる」と表現される場合はかます鋒/かます切先と判断することができます。

小鋒/小切先

フクラ張る・フクラ付く

小鋒/小切先とは、かます鋒/かます切先とほとんど同じ大きさの鋒/切先のこと。時代区分では、かます鋒/かます切先の次に作刀されたのが小鋒/小切先です。

なお、小鋒/小切先とかます鋒/かます切先は、ほとんど同じ大きさであるため、見分けるのが難しいと言われています。

その見分け方は、ふくらの具合を見ること。小鋒/小切先は、かます鋒/かます切先と異なり、ふくらに膨らみがあることを表現する「フクラ張る」や「フクラ付く」などの刀剣用語が用いられるため、区別することが可能です。

中鋒/中切先

中鋒/中切先とは、小鋒/小切先よりも大きい鋒/切先のこと。古刀(ことう:平安時代中期から安土桃山時代末期までに作刀された刀剣)や新刀(しんとう:安土桃山時代末期から江戸時代中期に作刀された刀剣)を問わず、様々な時代で採用された代表的な鋒/切先です。

猪首鋒/猪首切先

猪首鋒/猪首切先

「猪首鋒/猪首切先」とは、「中鋒/中切先」の一種のこと。

一見では、中鋒/中切先と区別しづらいですが、猪首鋒/猪首切先はその名称の通り、猪の首のように少し短く詰まった姿をしているのが見分けるポイントです。

大鋒/大切先

大鋒/大切先とは、5種のなかでひと際大きい鋒/切先のこと。馬上戦を想定した太刀(たち)や大太刀(おおたち)など、大型の刀剣に採用された鋒/切先で、他の4種と比較すると明らかに大きいため、すぐに区別が付きます。

帽子

帽子

帽子

帽子」とは、鋒/切先に現われる刃文(はもん)のこと。その刀剣を作刀した刀工の技量と特徴がよく現われる部位であり、刀剣に関する書籍には「名工で帽子が下手な人はいない」や「作刀者が不明の刀剣を鑑定する上で、最後の決め手となるのが帽子」と書かれるほど重視されていました。

帽子が鋒/切先の頂点付近から棟側へカーブする様子を「返る」と言い現わし、名工ほどその帽子は「小さく、丸く返る」と言われています。帽子は、鋒/切先が大きいほど表現の幅が増すと言われており、時代が新しくなるにつれて多彩な刃文が焼かれました。

大丸帽子

大丸帽子

大丸帽子」(おおまるぼうし)とは、刃側に限りなく近い部分に焼かれた刃文がそのまま鋒/切先へ流れ込み、鋒/切先の頂点付近で大きく丸みを帯びて棟側へ流れている帽子のこと。

古い刀剣関連の書籍では、「大帽子」とも表記されており、鋒/切先の頂点付近に現われる丸みの大きさによって大丸帽子、「中丸帽子」(ちゅうまるぼうし)、「小丸帽子」(こまるぼうし)の3種に分けられます。大丸帽子は3種のなかでも最も丸みが大きく、古刀に多く見られる帽子です。

中丸帽子

中丸帽子

中丸帽子とは、鋒/切先に現われる刃文の丸みが大丸帽子よりも少し小さい帽子のこと。

小丸帽子と区別が付きづらいため、刀剣を鑑賞する際は大丸帽子よりも小さければ中丸帽子ではなく、小丸帽子と判断する愛刀家も多いです。

小丸帽子

小丸帽子

小丸帽子とは、大丸帽子・中丸帽子よりも鋒/切先に現われる刃文の丸みが小さい帽子のこと。

新刀に多く見られる帽子で、刀身に焼かれた刃文が波のようにうねる「乱刃[乱れ刃]」(みだれば)である場合、「乱れ込み小丸に返る」。刃文が刃に沿って真っ直ぐに焼かれた「直刃」(すぐは)である場合は「直ぐに小丸に返る」と言い表わします。

火焔帽子

火焔帽子

火焔帽子」(かえんぼうし)とは、鋒/切先に現われる刃文の頂点が炎のように尖っている帽子のこと。

古い刀剣関連の書籍では、「火炎頭」(かえんがしら)とも表記されており、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて大和国(現在の奈良県)で活躍した刀工一派「当麻派」(たいまは)や、鎌倉時代末期に相模国(さがみのくに:現在の神奈川県)で活躍した刀工「行光」(ゆきみつ)の作で多く見られます。

一枚帽子

一枚帽子

一枚帽子」(いちまいぼうし)とは、横手筋よりも下に焼かれた帽子のこと。刀剣関連の書籍では「白帽子」(しろぼうし)とも表記されており、一説には焼き入れの際に火加減を誤った結果、できた帽子と言われています。

なお、「皆焼刃」(ひたつらば:刀剣全体に刃文が焼かれていること)の刀剣や、両方の側面に刃が付いた「両刃」(もろは:刀身の両側に刃が付けられていること)の刀剣の場合は、刀工が計画的に一枚帽子を焼くこともありました。

地蔵帽子

地蔵帽子

「地蔵帽子」とは、鋒/切先に現われる刃文の頂点が地蔵の頭のように、くびれた丸みを帯びた帽子のこと。

乱刃が焼かれた刀剣に現われる帽子と言われており、室町時代末期に美濃国(現在の岐阜県南部)で活躍した刀工の作に多く見られます。

焼詰帽子

焼詰帽子

焼詰帽子」(やきづめぼうし)とは、鋒/切先に現われる刃文の頂点が返ることなく、刃に沿って棟側へ抜けている帽子のこと。

五箇伝(ごかでん:日本刀の主な5つの生産地)のなかでも、「保昌派」(ほうしょうは)、「千手院派」(せんじゅいんは)、「手掻派」(てがいは)、「当麻派」(たいまは)などの「大和伝」の作に多く見られます。

掃掛け帽子

掃掛け帽子

掃掛け帽子」(はきかけぼうし/はっかけぼうし)とは、鋒/切先に現われる刃文の頂点付近が、まるで箒(ほうき)で掃いた跡のように、一方向に向かって幾重もの筋となっている帽子のこと。

大和国や相模国で活躍した刀工の作でよく見られる帽子です。

なお、箒で掃いた跡のように見える筋の正体は、肉眼で確認できる大きさの粒子「」(にえ)であり、その筋は通常、短く切れ、そう長くは続いていません。

また、掃掛け帽子は焼詰帽子に混じって現われることが多いと言われていますが、焼詰帽子以外にも小丸帽子や火焔帽子に混じって現われることもあります。

身幅

身幅とは

身幅

身幅

身幅」(みはば)とは、棟から刃先までの長さのこと。

刀剣の見た目の印象を大きく左右する他、その刀剣がいつの時代に作刀されたのかを特定するための判断材料にもなる部分です。

身幅のなかでも、(まち:[なかご]に向かってカギ形にくぼんでいる部位)の側面の幅を「元幅」(もとはば)、区の棟の厚みを「元重」(もとかさね)。

また、横手筋付近の側面の幅を「先幅」(さきはば)、横手筋付近の棟の厚みを「先重」(さきかさね)と呼びます。身幅は、作刀された時代の戦闘形式にしたがって、様々な変化を遂げました。

  • 元幅・先幅
    元幅・先幅
  • 元重・先重
    元重・先重

平安時代後期~鎌倉時代中期の身幅

平安時代後期から鎌倉時代中期に作刀された刀剣は、身幅が広く、重ねが厚く、重量がありました。先幅と元幅の差が大きいことを「踏ん張りがある」と言い、この形状の刀剣は鋒/切先が小さくなるため、優美な印象を与えるのが特徴です。

鎌倉時代末期から南北朝時代の身幅

鎌倉時代後期から南北朝時代になると、それまで主流だった「踏ん張りがある刀剣」は次第に作刀されなくなり、身幅が広く、重ねが薄い刀剣が主流になります。この時代は、先幅と元幅の差が小さい刀剣が多く作刀されました。

室町時代から安土・桃山時代の身幅

室町時代前期は、鎌倉時代初期の様式を模した、身幅・鋒/切先が共に尋常(刀剣用語で、刀身の身幅が特に[広い]、[狭い]などとは感じない様子)で、反りの高い太刀姿が多く作刀されます。

戦闘の形式が騎馬戦から徒歩戦へ移行した室町時代後期になると、(さや)から刀身を抜きやすく、片手による使用がしやすいように刃長(はちょう)の短い刀剣が登場。こうした刀剣は一般に「打刀」(うちがたな)と呼ばれ、それまで作られていた刀剣よりもさらに斬撃に向いた武器として使用されました。

室町時代末期から安土桃山時代は、古刀が作刀された最後の時代です。この時期に作刀された刀剣は、一般に「末古刀」(すえことう)と呼ばれており、身幅が広く、鋒/切先も延びた姿が特徴となっています。

江戸時代の身幅

江戸時代に入ると、各地の交通が整備された関係で、次第に刀剣の原材料や鍛錬法の地域差が少なくなっていきました。各地の刀工は、それぞれの移住地で他の流派の刀工と交流する機会が増えたことで、様々な伝法を採り入れた刀剣を作刀するようになります。

江戸時代前期の刀剣は、先幅が狭く、中鋒/中切先となっているのが特徴。実用に耐える作はあまり作刀されなくなり、美術的価値が高い刀剣が数多く作られました。

幕末時代になると、実用性重視の古刀を再現しようと奮起する刀工が各地に出現。身幅は広く、鋒/切先の延びた、鎌倉時代後期から南北朝時代に見られる大振りの体配となった刀剣が作刀され、それらの刀剣は幕末志士などから愛用されたと言われています。

反り

反りとは

反りとは、鋒/切先から棟区までを線で結んだ際、棟とその線までの距離が最も離れている部位の寸法のこと。一般に「日本刀」と言われる刀剣の特徴であるだけではなく、日本刀の優れた切れ味は、反りがあることで生み出されているのです。

反り・茎

反り・茎

反る箇所の中心がどこにあるかによって「腰反り」(こしぞり)、「中反り」(なかぞり)、「先反り」(さきぞり)、「内反り」(うちぞり)、「筍反り」(たけのこぞり)、「無反り」(むぞり)の6種に大別されており、反り具合からその刀剣がいつの時代に作刀されたのかをある程度推測することができます。

様々な反り

腰反り

腰反りとは、平安時代後期から鎌倉時代前期に作刀された刀剣に多く見られる反りのこと。反りの中心が、茎に近い位置にあるのが特徴。刀剣用語では、反り具合が大きく、作刀された当時の姿を保っている様子を「腰反り高く踏ん張りつき」と表現します。

中反り

中反りとは、「鳥居反り」(とりいぞり)とも言われる、鎌倉時代に作刀された刀剣に見られる反りのこと。反りの中心が、刀身の真ん中付近にあるのが特徴で、五箇伝のなかでも「山城伝」(やましろでん)の作に多く見られます。

先反り

先反りとは、室町時代から戦国時代に作刀された刀剣に見られる反りのこと。反りの中心が、刀身の中央よりも鋒/切先寄りにあるのが特徴です。室町時代に登場した打刀の出現に伴って現われた反りで、腰に差した刀剣を抜きやすくするために考案されたと言われています。

内反り

内反りとは、奈良時代以前、及び鎌倉時代に作刀された刀剣に見られる反りのことで、その反りが他の反りと異なり、棟側ではなく刃側に付いているのが特徴。「上古刀」(じょうことう:奈良時代以前に作刀された反りのない直刀のこと)や、鎌倉時代に作刀された短い刀剣「短刀」が内反りの典型例です。

筍反り

筍反りとは、内反りの一種で、鎌倉時代に作刀された刀剣に見られる反りのこと。鎌倉時代中期に越中国(現在の富山県)で活躍した刀工「則重」(のりしげ)が作刀した短刀に特に見られる反りで、刀身に反りが少なく刃の方へ傾いているのが特徴です。

無反り

無反りとは、江戸時代に作刀された刀剣に見られる反りのこと。「剣術」で使用する「竹刀」(しない)の出現に伴って現われた反りで、刀身に全く反りがないのが特徴です。無反りの刀剣は、一般的に反りが付いた刀剣よりも切れ味が劣る一方で、「突き」に特化した性能があると言われています。無反りの刀剣は、普段剣術の稽古で使用する竹刀とその体配が同じであるため、差料(さしりょう:武士が腰に差していた刀剣)として武士の間で大流行したのです。

長さ

刀剣の長さは、姿と同じく鋒/切先から棟区までの距離で決定されます。そして、その長さによって大太刀、太刀、打刀、「脇差」(わきざし)、短刀の5種類に分類することが可能です。

大太刀

大太刀とは、日本で作刀された刀剣のなかでも最大級の刀剣のこと。刃の長さは約3~10尺(約90cm~約3m)あるのが特徴です。主に神社などへの奉納刀として作刀されていましたが、実際に戦場で使用されたこともありました。戦場で使用する場合、使用者は馬上で大太刀を振るうため、持ち運ぶ際は従者が大太刀を抱えて、必要なときに馬上の主へ渡したと言われています。

太刀と大太刀

太刀と大太刀

太刀

太刀とは、大太刀よりも小さい刀剣のこと。刃の長さは約2尺3寸~3尺(約70cm~約90cm)あるのが特徴です。太刀は大太刀と異なり「太刀緒」(たちお)と呼ばれる紐や革を使用し、腰から吊るして持ち運んでいました。

打刀

打刀とは、太刀よりも小さい刀剣のこと。刃の長さは約2尺(約60cm)以上あるのが特徴です。時代劇などでは、武士が2振の刀剣を腰に差していますが、このうち長い方の刀剣が打刀です。

打刀

打刀

脇差

脇差とは、打刀よりも小さい刀剣のこと。刃の長さは約1~2尺(約30cm~約60cm)以下と、打刀と比較すると少しだけ短いのが特徴で、武士が携帯した2振の刀剣のうち、短い方の刀剣が脇差です。

なお、その長さが1尺8寸~2尺(約54.5cm~約60cm)ある場合は「大脇差」(おおわきざし)、1尺3寸~1尺8寸(約40cm~約54.5cm)未満である場合は「中脇差」(ちゅうわきざし)、1尺3寸(約40cm)未満であれば「小脇差」(こわきざし)に分類されます。

脇差

短刀

短刀とは、脇差よりも小さい刀剣のこと。刃の長さは1尺(約30cm)未満と、女性や子どもでも扱えるサイズであるのが特徴で、古くから護身用の武器として利用されていました。なお、護身用の短刀は約4寸~5寸(約12cm~15cm)までの長さが一般的で、懐へ隠して持ち運んだことから、「懐剣」(かいけん)、「懐刀」(ふところがたな)、「隠剣」(おんけん)などとも呼ばれています。

また、「鎧通」(よろいどおし)と呼ばれる、甲冑(鎧兜)の隙間に刺すための短刀も存在。鎧通は、フィクション作品では暗殺の道具として登場することが多い武器であり、右手で逆手に持って使用するのが特徴です。その長さは通常、約9寸5分(約28.8cm)以下、つまり肘までの長さになります。

鎧通

鎧通

甲冑(鎧兜)の基礎知識甲冑(鎧兜)の基礎知識
初めての方にも解りやすい内容で、甲冑(鎧兜)の基礎知識が学べます。