刀剣の基本を知る

刀剣の部位について

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刀剣を知るためには、各部位の名称をきちんと把握することが大切です。刀剣の部位を知ると、刀剣を扱う際や鑑賞する場合にとても役立ちます。刀剣には、太刀と打刀などの種類がありますが、部位の名称は同じです。これを覚えて、刀剣を鑑賞し理解を深めましょう。

刀剣各部の名称

刀剣は、「上身」(かみ:刀身[とうしん]部分)と「」(なかご:素手で触ることができる部分)で構成されています。

このふたつを分けているのは、「」(まち)と呼ばれる境界線です。さらに区は、「刃」(は:物を切る部分)側の「刃区」(はまち)と「」(むね:刃の反対側。峰[みね]とも言う)側の「棟区」(むねまち)に分けられています。

なお、刀剣の長さは、上身と茎を合わせた「全長」と上身(刃区から鋒/切先まで)だけの「刃長」(はちょう)で表記しますが、刀剣の長さが「○尺○寸」や「○cm」と書かれている場合は、通常は刃長のことを言います。

ここでは、「打刀」を上身と茎に分け、名称を詳しく解説します。

打刀の部位(刀身)

打刀の部位(刀身)

「上身」編

上身の部位

上身の部位

  1. 鋒/切先

    鋒/切先(きっさき)とは、刀身の最も先端にある部分のこと。

    鋒/切先と物打ちの間にある線のことを「横手」(横手筋)と言い、敵を斬ったり刺したりするのに使用される最も重要な箇所です。

    戦闘方法の変化などによって形状が異なるのが特徴です。なお、鋒/切先の刃文のことを「帽子」(ぼうし)と言います。丸帽子(小丸、中丸、大丸)、焼詰め帽子、掃き掛け帽子など種類が多く、帽子によっても、制作の年代を判別することが可能です。

  2. 物打ち

    刀剣で実際に斬り付けるときに物に当たる部分。先端から3寸(約9.1cm)ほど下にあります。

  3. 焼き入れによって、物を切断できるように硬い鋼となった部分。地鉄(じがね)部分と比較すると明るく見えます。

  4. 刃文

    焼き入れによって生じた焼刃の模様のこと。

    直線になっている物は(直刃:すぐは)、曲線になっている物は(乱れ刃:みだれば)と言い、時代や流派によって、刀匠の個性が顕著に現れる、刀剣の最大の見どころです。

  5. 鎬筋

    横手(横手筋)から茎の最下部までにある、刃と棟の中間で、山高くなっている境界線のこと。

  6. 鎬地

    鎬筋と棟に囲まれた部分。ここに現れる肌目も流派や時代を推測する手がかりのひとつです。

    大きく分類すると「古刀期」には木材の「板目」のようになっている傾向があり、「新刀期」以降には、同じく木材の「柾目」(まさめ)になっている形状の物が、多く見られます。

  7. 平地

    鎬造りで、鎬地ではない部分。刀剣の鑑賞の際には、ここに地鉄(じがね:刀身の鍛錬によって生じた肌模様)が現れます。

「茎」編

茎の部位

茎の部位

  1. 茎尻

    茎尻(なかごじり)とは、茎の最下端部のこと。

    剣先のように尖った「剣形」や、栗の尻のように丸みを帯びた「栗尻」など、様々な形状があり、時代や刀匠によって異なる特色がよく窺える箇所です。

  2. 鑢目

    鑢目(やすりめ)とは、刀身がから脱落しにくくするために施された滑り止め。

    古くは槌で打ち放して整えたままの物でしたが、時代が下るにつれて美観を考慮した「化粧鑢」(けしょうやすり)が見られ、刀匠が意匠を凝らす箇所にもなりました。

    左利きの刀匠がかける「逆鑢」(ぎゃくやすり)など、作り手の細かい癖が分かるポイントになっています。

  3. (めい)とは、刀剣の作者名や制作年を刻んだ文字列のこと。奈良時代に施行された「大宝律令」によって義務付けられ、平安時代末期から一般化しました。

    「鏨」(たがね)を打ち込んだ痕や銘の底に発生した錆などが鑑賞のポイント。ほとんどが銘切り鏨で切った「切銘」(きりめい)ですが、江戸時代初期の繁慶(はんけい)一門が唯一、彫鏨で銘を彫り込む「彫銘」(ほりめい)を用いています。

    なお、銘がない物は、無銘(むめい)と呼ばれます。

  4. 目釘穴

    目釘穴(めくぎあな)とは、柄に「目釘」で茎を固定するために穿たれた穴。

    時代の移り変わりによる変化や、磨上げ(すりあげ:刀剣の寸法を短くすること)によって開け直された場合があり、穴が複数になっている物も存在します。

    連続した2つの穴が瓢簞形になっていたり、目釘が柄から脱落するのを防止する目的で鍵穴形になっていたりと、形状は様々です。

刀剣の鑑賞ポイント

刀剣を鑑賞する際に重要なのは、「姿」(すがた)、刃文、地鉄をしっかりと観ることと言われています。

そこで、必ず観るべき部位のポイントを解説します。

姿を観るとは?

刀剣の姿は、別名「体配」(たいはい)と呼ばれます。姿を観るには、全体的にとらえることが必要ですが、具体的には、刀剣の「反り」、「幅」、「鋒/切先」をしっかりと観ることです。この3点に注目すると、作刀された時代や刀工の個性を読み取れることができるようになります。

まず、「反り」とは、鋒/切先から刃区までを線で結び、棟とその線が離れている(歪曲している)状態のこと。

反りは、刀剣を象徴する美しさの要であり、反りが付いたことによって、少ない力で効果的に物を切ることができるようになりました。反りは時代によって、変化するのが特徴で、室町時代以前は茎から反りが始まり、それ以降は、刀身の中央よりも鋒/切先に近い部分の反りの物が多くなります。

また、「身幅」とは、棟から刃までの長さのことです。区の部分は「元幅」、横手筋部分は「先幅」と言います。

元幅が大きく、先幅が小さい形状の刀剣は、鎌倉時代に多く、「踏ん張りがある」と表現されました。なお、鋒/切先は、刀身の最先端部分のことで、こちらも時代により、小鋒/小切先、中鋒/中切先、大鋒/大切先と分類されます。

「日本刀の姿」をはじめ、刀剣に関する基礎知識をご紹介します。

刃文を観るとは?

刃文とは、焼き入れによって付けられた焼刃の形状のこと。刀剣を光に当てることによって刃先部分に観ることができる、白い波のような模様を言います。なお、焼き入れは、刀剣作りの工程のひとつ。

刀剣を火炉に入れて高温で熱し、水で急冷すると、刃先の鋼(はがね)が急変して硬度が高い刃物となり刃文が付くのです。

刃文に流派や刀工自身の個性が強調されるようになったのは、作刀技術が向上した、鎌倉時代中期から。模様は土の塗り方によって変化させることができるので、刀工の腕の見せどころとなりました。

刃文の出来栄えによって、刀剣の価値そのものも左右されるほど重要なものとなったのです。

刃文を鑑賞するときは、様々な角度から光に当て、刃文を構成する「」(にえ)や「」(におい)と呼ばれる粒子の形状やきらめき、刃中の働きを楽しみましょう。

「日本刀の刃文」をはじめ、刀剣に関する基礎知識をご紹介します。

地鉄を観るとは?

地鉄とは、鍛え肌(地肌とも呼ぶ)の模様のこと。

地鉄の模様は、原材料である砂鉄から作られた「玉鋼」(たまはがね)を、折り返し鍛錬することによって現れます。

現れる場所は、刀剣の棟側で、鎬(しのぎ)と刃先、横手に囲まれた区際(まちぎわ)までの長方形の部分(焼きが入っていない黒色に見える部分)です。刀剣を手に取って、光に反射させることによって、ようやく確認することができます。

地鉄をよく鑑賞することで、複雑な工程を経て鍛錬された鉄の色や模様の違い、刀剣が作られた地域や刀工の個性を楽しむことができるのです。

「日本刀の姿」をはじめ、刀剣に関する基礎知識をご紹介します。