刀剣の鑑定区分
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刀剣は、武器ではなく美術品とされており、「美」という価値を存分に評価されます。それでは刀剣には、どのような鑑定機関があって、どのように評価されているのでしょうか。刀の鑑定について、その歴史や変遷を詳しくご紹介します。
刀剣の鑑定区分とは
国による評価とは
日本国では、長い歴史の中で生まれ、育まれ、守られてきた国民的財産を「文化財」としています。
1950年(昭和25年)に「文化財保護法」が制定され、歴史的・文化的に価値が高い文化財は、国が指定・保護することになりました。
その対象は、有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群の全6種類。このうち、刀剣と深いかかわりがあるのは、「有形文化財」です。
有形文化財には、建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書があり、刀剣は工芸品に該当します。
国宝、重要文化財とは
有形文化財のうちで、文部科学大臣が特に重要と指定した物を重要文化財と言い、その重要文化財の中でも、さらに文化史的に価値が高い物を国宝と言います。
国は国宝、重要文化財に評価、指定することで、保存修理の補助などを行ない、保存を図っているのです。なお、「旧国宝」とは、1929年(昭和4年)に「国宝保存法」によって指定された建造物及び宝物類のこと。
1871年(明治4年)に明治政府が「古器旧物保存方」(こききゅうぶつほぞんかた)を布告して調査を進め、1897年(明治30年)「古社寺保存法」(こしゃじほぞんほう)にて「特ニ歴史ノ証徴又ハ美術ノ模範」であると指定した物が引き継がれました。
刀剣の場合は、江戸時代に刀剣鑑定として有名だった本阿弥家の発行した「折紙」も大いに参考にしたのではないかと推測できます。
しかし、1950年(昭和25年)文化財保護法が制定されたことで、国宝保存法は廃止。したがって、旧国宝とは、文化財保護法が施工される以前に国宝と指定された物のこと。
新たに選定した国宝と区別するために、旧国宝と表記される場合があるのです。

重要美術品とは
「重要美術品」とは、1933年(昭和8年)に制定された「重要美術品等の保存に関する法律」により認定された美術品のことです。
国宝に準ずる美術的な価値をそなえている優れた美術品である8,237件に対して、海外流出を防ぐ目的で指定されました。ところが、先ほど紹介したように1950年(昭和25年)に文化財保護法が制定されたことにより廃止。
これにより、重要美術品は重要文化財へと繰り上げられた物もありますが、約7,000件は行き場を失い、現在も重要文化財に次ぐ物として、重要美術品の名前で呼ばれ続けています。
日本美術刀剣保存協会による鑑定とは
公益財団法人・日本美術刀剣保存協会でも、文部科学大臣の許可のもと、1948年(昭和23年)から優れた刀剣に対して評価が行なわれています。
現在は、優れた刀剣に対して、鑑定書を発行。優れている順から「特別重要刀剣」、「重要刀剣」、「特別保存刀剣」、「保存刀剣」の4段階で評価がされています。
特別重要刀剣
「特別重要刀剣」とは、重要刀剣のうちで、特に傑作で保存状態の良い刀剣のこと。国が指定する重要美術品の上位の刀剣と同等の価値があるとされています。
重要刀剣
「重要刀剣」とは、平安時代から江戸時代までの作品で、特に保存状態や素性の良い刀剣のこと。
室町時代及び江戸時代の刀剣は、原則として生ぶ茎(うぶなかご:磨上げや区送りのない制作当初の茎)で在銘の物に限りますが、南北朝時代までの刀剣は、無銘でも史科性が重視され、重要刀剣に選定されています。
国が指定する重要美術品に準ずる刀剣という評価です。
特別保存刀剣
「特別保存刀剣」とは、保存刀剣の中でも優れた出来で、保存状態の良い刀剣のこと。明治・大正時代に制作された物でも傑作であれば、特別保存刀剣に選ばれることがあります。
ただし、優れた出来であっても、キズや補修が目立つ物など、美観を損なう物は対象とはなりません。
保存刀剣
「保存刀剣」とは、江戸時代までに制作された在銘の物で、多少の傷や補修があっても美観を損なわない刀剣。または、無銘でも制作年代、国、系統を読み取ることができる物。明治・大正時代以降に制作された刀剣は、在銘で出来が良い、優れた刀剣であれば、保存刀剣に選定されます。
ただし、生存する作家の作品は対象とはされません。
特別貴重刀剣、貴重刀剣とは
「特別貴重刀剣」、「貴重刀剣」も、公益財団法人・日本美術刀剣保存協会による評価です。公益財団法人・日本美術刀剣保存協会では、1948年(昭和23年)から認定制度を設けて、優れた刀剣を「貴重刀剣」、さらに優れた物を「特別貴重刀剣」と認定しました。
1973年(昭和48年)からは、さらに優れた物を「甲種特別貴重刀剣」と認定。しかしながら、1982年(昭和57年)5月に、これらの認定制度は廃止。1982年(昭和57年)9月から、現在の鑑定制度に変更されています。
したがって、特別貴重刀剣、貴重刀剣、甲種特別貴重刀剣と書かれた認定書をお持ちの方は、要注意。それらは廃止されている認定制度であるため、評価に効力があるとは言えません。
すみやかに、公益財団法人・日本美術刀剣保存協会による鑑定を受け直すよう、おすすめします。
刀剣に関する基礎知識をご紹介します。