刀剣の豆知識

日本刀の数え方 - 名古屋刀剣ワールド

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日本刀は、日本が世界に誇る伝統工芸品です。現在では、様々なメディアで日本刀を観る機会が増えています。世界中に愛好家やコレクターが存在し、美術品・骨董品としての評価が非常に高い日本刀ですが、その数え方には数種類あることはあまり知られていません。日本刀の基礎知識として、日本刀の主な数え方をその由来にも触れながらご紹介します。

日本刀の数え方

拵

日本刀の主な数え方を10種類ご紹介します。馴染みのある数え方、また、殆ど知られていない数え方があり、どのような由来があるのかを知ることで、より日本刀の知識を深めるきっかけになるのではないでしょうか。

本(ほん)

1本(いっぽん)、2本(にほん)、という数え方。

「本」は、日本刀に限らず、日常的によく使われます。江戸時代に長さの違う日本刀を腰に差している様子を「大小二本差し」などと表現していたように、単純に本と数えることができます。

振(ふり)

刀剣類全般に使える

刀剣類全般に使える

1振(ひとふり)、2振(ふたふり)と読みます。

歴史ファンや刀剣に興味を持っている方にとっては聞き馴染みのある数え方ではないでしょうか。

「振」と言う数え方は、「刀を振る」に由来しています。剣道薙刀(なぎなた)の稽古でも、「素振り」という言葉が使われているように、刀を振り回す、刀を振り下ろす動作から、太刀(たち)、打刀(うちがたな)、脇差(わきざし)といった刀剣類全般に使うことができる数え方です。

腰(こし/よう)

「1腰」は、基本的に「ひとこし」と読み、稀に「いちよう」とも読むことがあります。

元来より武士は、打刀や太刀を腰に差している、または、腰に引っ提げていることから、「腰」という数え方になったのです。この「腰」という数え方は、平安時代後期頃から使われるようになったと言う説も。もし、刀を差す部分が違っていたら、別の数え方が生まれていたのかもしれません。

この「腰」という数え方は、愛刀家としても知られる武将「上杉謙信」(うえすぎけんしん)が、特に気に入った日本刀を集めた名刀リスト「上杉家御手選三十五腰」(うえすぎけおてえらびさんじゅうごよう)により有名です。なお、この上杉家御手選三十五腰は、もとの台帳が紛失してしまっており、35腰の詳細は分かっていないため現在でも研究が進められています。

口(くち/こう/ふり)

「1口」と書いて、「ひとくち」、「いっこう」、「ひとふり」と読む数え方。

なかでも「ひとふり」と読むのは意外に思われるかもしれません。「口」という漢字からも想像がつくように、この「口」という数え方の由来は、刀で切り口を付ける様子から生まれた単位です。「口」は、主に奈良時代によく使われていた数え方だと言われています。

刀(とう)

二刀流

二刀流

「刀」(とう)は、「1刀、2刀」(いっとう、にとう)と数えます。

この「刀」という数え方は、「一刀両断」(いっとうりょうだん)、「二刀流」(にとうりゅう)、「北辰一刀流」(ほくしんいっとうりゅう)、「抜刀」(ばっとう)、「刀剣」(とうけん)などの言葉があるように、聞き馴染みのある単位ではないでしょうか。「刀」は、その名の通り、刀そのものを示すことから由来する数え方です。

剣(けん)

」という数え方は、「1剣」と書いて、「いっけん」と読みます。

この「剣」は、「刀」と同様に、日本の「剣」(けん/つるぎ)そのものから由来した数え方。日本には、「天下五剣」(てんがごけん)、「神代三剣」(かみよさんけん)という言葉があります。

数多くある日本刀の中でも、最高傑作と言われる名刀5振を、天下五剣と呼んで称賛。この天下五剣とは、「童子切安綱」(どうじぎりやすつな)、「三日月宗近」(みかづきむねちか)、「鬼丸国綱」(おにまるくにつな)、「大典太光世」(おおでんたみつよ)、「数珠丸恒次」(じゅずまるつねつぐ)の5振を指し、明治時代以降の刀剣関連の書物に登場しているのです。

そして、神代三剣とは、別名「日本三霊剣」(にほんさんれいけん)とも呼ばれ、神話から伝わる重要な日本の剣3振を総称した呼び方。神代三剣に数えられ神話時代の最も重要とされる3振とは、「天十握剣」(あめのとつかのつるぎ)、「天叢雲剣」(あめのむらくものつるぎ)、「布都御魂」(ふつのみたま)です。平安時代中期以降、日本の剣は神社への奉納品とされており、現在ではこの神代三剣も由緒ある神社に祀られています。

ヒ(ひ)

脇差・短刀

脇差・短刀

「ヒ」(ひ)は、主に短刀(脇差)に対して使われる数え方です。

この「ヒ」という数え方は、もともとは、「年老いた女性の象形」から由来すると言われています。年老いた女性は「亡き母親」のことを象徴していると意味合いが転じて、亡き母親とは亡き父親と並ぶ重要な存在。さらに転じて、「〇〇と並ぶ重要なもの[存在]」という意味へと変化。

「ヒ」が、日本刀の中でも、主に短刀(脇差)の数え方として使われるようになったのは、短刀は太刀と並ぶ物(重要な存在)という意味が強く残ったことが理由とされています。

槍や薙刀を数える際に使用

槍と薙刀

槍と薙刀

筋(すじ)条(じょう)

槍の部位名称

槍の部位名称

「筋」、「条」は、「ひとすじ」、「いちじょう」と読み、刀剣の中でも、「」(やり)を数える場合に使用される単位です。

現在では、槍を数えるときには、主に「本」を使って数えますが、昔は、この「筋」や「条」を使って数えるのが一般的。

槍は、長細い剣を長い(つか)の先に付けて、相手を突き刺す戦い方で使用される武器です。穂(ほ)や柄の形状や長さによって、「十文字槍」(じゅうもんじやり)、「鉤槍」(かぎやり)、「鎌槍」(かまやり)など様々な種類があります。

「筋」、「条」という数え方の由来には諸説ありますが、槍の形状や、相手を突き刺す戦い方が、1本の筋を描いている様子に見えることに由来しているとされています。また、「条」という文字には「すじみち」という意味があることから、「条」という漢字が使われているのです。

柄(から/へい)

「1柄」と書いて、「ひとから」、「いちへい」、「ひとへい」と読みます。この「柄」も、槍や薙刀を数える際に使用する数え方。

「柄」が使われる由来は、槍や薙刀には、長い柄があるからです。槍や薙刀以外にも、「」(ほこ)のように長い柄がある武器は、「柄」と数えることができます。

槍(やり/そう)

「1槍」は、「ひとやり」、または、「いっそう」と数え、主に槍の数え方として使われますが、槍そのものを示すのではなく、槍で攻撃した回数を数えるときに使う単位です。

日本には「一本槍」という言葉がありますが、これは「ひと突きで勝負を決める」、「ひとつの技や事柄を押し通す」という意味で使われる言葉で、この「槍」という数え方の意味とも関連しているのではないでしょうか。

まとめ

日本刀の数え方には、「本」、「振」など一般的にも知られているもの以外にも、「腰」、「口」などの、あまり馴染みのない数え方も存在しています。さらに、短刀を数えるときに使う「ヒ」や、槍を数えるときに使う「筋」のように、ある種類の刀剣類を限定する数え方もあり、刀剣に対する知識を深め、より興味を持つことに繋がります。

現在では、多くの美術館や博物館などの施設で、刀剣類を目にすることが可能です。そういった機会には、刀剣の数え方を思い出しながら刀剣鑑賞をするのも楽しみのひとつに繋がります。