模造刀

模造刀を所持するときの注意点

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模造刀とは、日本刀の形態を模して作られた、刃の付けられていない物を指します。武器となる日本刀とは違い、高い殺傷力を有しているわけではない模造刀ですが、法律上は「模造刀剣類」と呼ばれ、所持や携帯に関して一定の決まりが設けられているのです。刀剣にまつわる法律と模造刀の関係や、持ち歩くときの注意点などについてご紹介します。

銃砲刀剣類所持等取締法

模造刀は日本刀の形態を模して制作された物ですが、鉄や鋼を素材とする日本刀とは違い、亜鉛(あえん)、真鍮(しんちゅう)、アルミニウムなどの合金類を素材とし、日本刀の伝統的な製法で制作されていないなど、日本刀とは一線を画した存在です。

また、模造刀には刃が付けられておらず、一般的に鋭い刃物や凶器となることはないとされていることから、日本刀や銃の所持や取り扱いを規制する「銃砲刀剣類所持等取締法」(以下、銃刀法)では、模造刀の所持が制限されていません。

しかし、凶器となる日本刀と外見が酷似しているため、銃刀法第22条の4により、業務などの正当な理由がない場合の模造刀の携帯が禁止されてます。ただし、社会通念に照らし合わせ、模造刀の携帯が正当であるとみなされる場合もあるのです。

例えば、刀剣専門店や武道具専門点などで模造刀を購入して帰る場合。店側によってしっかりと梱包がされ、一見して「購入しての帰途」と分かれば「正当な理由」に該当します。模造刀は「居合道」などの武道でも扱われるため、そのような武道の修行者が稽古場に向かう場合や、競技会に参加するため会場に赴く場合に、模造刀を専用ケースに入れて携帯している場合も「正当な理由」に該当するのです。

また、映画や舞台、舞踊など、演技を職業とする人が、稽古や出演のために模造刀を専用ケースに入れて携帯することは、「業務かつその他の正当な理由」にあたるため法には触れません。

「刀剣の正しい運搬方法」では、銃砲刀剣類所持等取締法についてご紹介しております。

銃砲刀剣類所持等取締法施行規則

銃刀法により、模造刀剣類としてその携帯を制限されている模造刀の種類は、「銃砲刀剣類所持等取締法施行規則」第104条(模造刀剣類)に以下のように記されています。

「法第22条の4の模造刀剣類について内閣府で定める物は、刀、剣、やり、なぎなたもしくはあいくちに著しく類する形態を有する物または飛出しナイフに著しく類似する形態及び構造を有する物とする。」

条文中の刀剣類とは、具体的には刃渡りが15㎝以上の刀、やり、なぎなたと、刃渡り5.5㎝以上の剣、あいくち、45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフの6種類が該当。法律上で模造刀剣類と呼ばれる物は、上記の刀剣類に形態が酷似している物、飛出しナイフに関してはそれに加え、機能的にもほぼ同じ物とされています。

違法性が問われる模造刀

銃刀法が規定する刀剣類に関しては、長い間、文言上明示されていませんでした。

しかし、1993年(平成5年)、東京高等裁判所において、以下に定義付けられたのです。

刀剣類とは、鋼質性の材料をもって制作され、殺傷力がある、あるいはある程度の加工によって殺傷力を有するようになる刃物で、社会通念上、「刀」の形態を有する物が刀剣類である。

上記の判例で模造刀と関連付けられるのは、「ある程度の加工によって殺傷力を有するようになる刃物」という点。これにより、模造刀でも加工等をすることによって殺傷能力が生ずると判断されれば、違法性が問われるようになったのです。なお、これにより、2007年(平成19年)に模造刀の携帯で有罪となった事例があります。

全長68.3㎝の鋼質性の素材でできた鋭利な状態の模造刀は、「ある程度の研磨等により刃を付けられる模造刀は、刃が付いていなくても銃刀法違反の刀に該当しうる」とされ、判決を受けました。

模造刀は一般的にアルミニウムなどの非鉄合金類を素材として制作されることがほとんど。しかし、模造刀と呼ばれる物の中には、軍刀や指揮刀、儀礼刀などの、刃が潰されているものの鉄や鋼、鉄合金などの鋼質性の刀身を持つ物が存在します。判決を受けた模造刀を含めたこれらの模造刀は、研磨などの加工によって容易に刃を作ることができるため、刃が付いていなくても違反の刀剣類に該当するのです。

  • 「模造刀とは」など、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

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違法性がない模造刀

一般的に、非鉄合金類を素材として制作されている模造刀は、所持しているだけの場合、罪に問われることはまずありません。

例えば、居合道の稽古などで使用される居合刀は、亜鉛合金を素材とし、「砂型鋳造法」(すながたちゅうぞうほう)という、金属を砂素材の型に流し込み、自然の重力によって作られた鋳物(いもの)製の模造刀。

刃も付いていないため、銃刀法には抵触しません。また、居合刀は使用目的がはっきりしているため、居合道などの稽古で扱うために持ち運ぶ場合、模造刀用の刀袋や専用ケースで持ち運ぶことが許可されているのです。

この他にも鑑賞を目的として制作された、ジュラルミンなどのアルミ合金で作られた模造刀も同法に問われることはありません。

模造刀の所持が違法になる場合

模造刀を専用ケースに入れて携帯

模造刀を専用ケースに入れて携帯

銃刀法に触れない模造刀である場合でも、所持法を誤ると「軽犯罪法」の第1条2号によって、罪に問われる恐れがあります。

これは、正当な理由なく刃物や鉄棒、その他生命や人体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた場合、拘留または科料に処されるという条項です。

例え刃の付いていない模造刀であっても、殴打すれば人体に重大な損傷を与えます。そのため、模造刀を「隠して携帯」することは軽犯罪法に抵触するのです。

「隠して携帯する」ということは、自宅や居室以外の場所において、ただちに使用できる状態で、人目に付かないように隠して持ち歩くことを指します。模造刀を持ち歩く場合は、専用のケースなどに入れ、一見して模造刀であると分かる状態で携帯しなければなりません。

模造刀で禁止されていること

所持が禁じられていない模造刀であっても、隠して携帯することは「軽犯罪法」違反となり相応の罰則が科されます。

また、模造刀を研ぐ行為は、「人体殺傷が可能になるよう改変を加えた」とみなされ、罪に問われる可能性も存在。鋼質性ではない模造刀は研磨しても鋭くなることはなく、刀身の外観を損なう行為につながるため、絶対にやめましょう。