刀剣の基本を知る

三所物(目貫・小柄・笄)とは

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日本刀に誂える刀装具の一種である「三所物」(みところもの)は、「目貫」(めぬき)、「小柄」(こづか)、「笄」(こうがい)の3点の総称。室町時代に、精緻な技法で制作された三所物が登場し、江戸時代に現在まで伝わる三所物の形式が完成されました。三所物の歴史と、それぞれ3点の刀装具についてご説明します。

  • 目貫・小柄・笄・縁頭写真/画像
    日本刀の装飾品として価値が高い、目貫・小柄・笄・縁頭の世界をぜひお楽しみ下さい。
  • 「三所物」をはじめ、その他の日本刀の刀装具についてご紹介します。

三所物の歴史

三所物とは

三所物(目貫・笄・小柄)

三所物(目貫・笄・小柄)

「三所物」(みところもの)とは、日本刀の外装に付けられる刀装具の名称で、目貫(めぬき)、小柄(こづか)、(こうがい)の3点の刀装具を1組として呼ぶ物です。

この3点の刀装具は本来、滑り止めなどを目的とした、刀に付随する独立した部品でした。

しかし、室町時代の金工師「後藤祐乗」(ごとうゆうじょう:後藤四郎兵衛とも)により、三所物に優美な意匠が取り込まれ、を装飾する物として扱われるようになったのです。

三所物は同一作者の手により、3点が揃いの意匠で制作されるのが一般的。江戸時代の武士達は、繊細な意匠を用いた鍔や、揃いの三所物などの刀装具を身に付けることを「粋」としていたのです。

また、三所物は本来太刀に付けられる刀装具でしたが、打刀が主流となってからは打刀の拵として付けられるようになり、江戸時代に武士が差していた大小拵では、大には三所物を付け、小には笄が省かれた物が付けられました。

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三所物の大家「後藤四郎兵衛家」

本来、三所物は鉄で制作されることが主流でしたが、室町幕府8代将軍「足利義政」(あしかがよしまさ)に仕えた金工師・後藤祐乗は、主流であった鉄の代わりに、赤銅や金を用いて、繊細な装飾を施した三所物を制作。

これ以降金工を生業とした後藤家の当主は、後藤祐乗の通称「四郎兵衛」を名乗り、後藤祐乗は後藤四郎兵衛家の始祖となります。後藤四郎兵衛家は室町幕府代々将軍や「織田信長」、「豊臣秀吉」の庇護下で刀装具制作を手掛け、江戸幕府が成立したのちは「徳川家康」に仕えるなど、御用達の工人として幕末に至るまで、代々刀装彫刻を生業としました。

なお、始祖となる後藤祐乗の作品は、赤銅や金、真鍮、銀などの、鉄製ではない刀装具に限られていたことから、代々後藤四郎兵衛家では同じ刀装具であるものの、鉄製であった鍔の制作は行なわれていません。

また、後藤四郎兵衛家の金物(かなもの)が将軍家の御用達であったことから、後藤四郎兵衛家代々の作品は尊重され、公の場において裃(かみしも:江戸時代の武士の中礼服)を着用する際には、後藤四郎兵衛家の工人の手による三所物を使用するのが、正式な装いとされました。

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目貫とは

目貫

目貫

目貫とは、柄の中央の表裏に据えられた、小さな金具のこと。三所物のひとつとして、精緻な技術によって制作された目貫は、柄を華やかに装飾する刀装具として扱われています。

本来の目貫は柄と刀身を固定するための「鋲頭」(びょうがしら)として、「目釘」(めくぎ)の頭に付けられていました。

のちに目貫は目釘と分離し、別の位置に付けられるようになり、日本刀を装飾する金物のひとつとされたのです。また、目貫が日本刀の中心線に正確に付けられたことから、この中心線を「目貫通り」と呼び、転じて、街の華やかな大路を目貫通りと称すようになりました。

実用品から装飾品へと変わっていった目貫は、獅子や虎などの動物や、家紋はもちろん、桜や鬼灯などの植物、鶴と亀などの縁起物をモチーフとするなど、様々なデザインの物が制作され、江戸時代の武士が多種多様なデザインの目貫を用いてお洒落を楽しんだことが分かります。

小柄・笄とは

小柄と笄は、基本的に表裏の対として日本刀のに装着される物。

この2点は南北朝時代頃に制作され始めますが、本来は将軍や有力大名御用達の刀装具であったため、大量生産された実戦向きの日本刀には付けられていませんでした。装飾品としての意味合いが目貫よりも強く、打刀に三所物が付けられるようになってからは、太刀などに小柄・笄が付けられることがなくなっていったのです。

小柄とは

小柄

小柄

小柄とは、日本刀の鞘に付けられた細工用の小刀で、緊急用の武器や、現在で言うペーパーナイフやカッターナイフとして使用されました。小柄は笄と共に、鞘の鯉口(こいくち)付近にある「小柄笄櫃」と呼ばれる表裏の溝に収められ、小柄は裏側に来るよう装着されます。

また、小柄や笄を装着する際、先端部が鍔に当たらないように、鍔には穴が開けられ、小柄側の穴は半月形。小柄の柄部分に精緻な装飾が施され、目貫、笄と同意匠の物が制作されました。

笄とは

笄

笄とは、小柄と対になるように日本刀の鞘に取り付けられた、身だしなみを整えるために用いられた小道具です。

鞘の差表の鯉口部分に作られた「笄櫃」に収められ、小柄と同様に、先端部分が鍔に触れないようにするため、笄側の鍔には州浜形の穴が開けられました。

笄は、髪や髷の手入れなどをする際に用いられる、江戸時代の武士の美意識を感じられる装飾品。一方で、先端が2又に分かれた「割笄」(さきこうがい/わりこうがい)と呼ばれる物も存在し、これは身だしなみ用ではなく、携帯用のお箸として使われたのではないかとされています。なお、江戸時代における大小2本差の小とされた脇差の刀装具では、笄は省略され、目貫と小柄のみが装着されました。

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