刀剣の拵を知る

拵(こしらえ)の解説

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「拵」(こしらえ)とは、日本刀の外装のこと。刀身を納める鞘(さや)、茎(なかご)を納める柄(つか)、柄を握った際に手が刀身の方へ滑らないように施す鍔(つば)をはじめ、日本刀を構成する「刀装具」(とうそうぐ:日本刀の装飾品)の総称で、制作者や制作年代によって様々な形状が考案されました。拵の解説では、拵の役割や変遷、種類をご紹介します。

拵とは

拵の役割

」という言葉は、日本刀の外装を示しますが、鞘や柄はどのような刀剣にも付属するのが一般的です。

その役割は主に「刀身を保護する」、「実用性を向上させる」、「所有者の威厳を示す」の3つが挙げられます。

刀身を保護する
「刀身を保護する」ことは、拵の起源にもかかわる重要な役割です。

日本刀に納めていない状態のことを「剥き身」と言い、この状態で置いておくと怪我をする恐れがある他、刀身が錆びる原因になります。

一般的な拵には鞘、柄、の他、様々な刀装具が施されているのが特徴で、時代劇等で将軍が持っている華美な様式の他、武士が腰に差している黒色の拵など、所有者の好みや時代によって多様化しました。

なお、日本刀の外装にはもうひとつ、鞘と柄のみで構成されている「白鞘」(休め鞘)があります。白鞘は、日本刀を長期間保管する際に用いる外装のこと。装飾が施されないだけではなく、表面に漆が塗られることもないため、一見すると「木刀」のように見えるのが特徴です。

鞘の表面に漆が塗布されない理由は、通気性を良くするため。湿気がこもらないようにすることで、錆びの発生を防ぐことができます。

なお、手入れの際に油を塗りすぎると錆びる原因になることもあるため、注意が必要です。

拵・白鞘

拵・白鞘

実用性を向上させる
拵は、日本刀を保護するだけではなく、実用性を向上する役割も持っています。

例えば、柄に柄糸(つかいと:柄に巻く組紐などの総称)を巻く「柄巻」(つかまき)は、柄の強度を高める他、握り具合を良くするなどの役割を持っているのが特徴です。

そのため、「柄巻師」(つかまきし:柄に装飾を施す職人)は柄糸の素材や形状、巻き方に様々な工夫を凝らしました。

なお、拵の形状は剣術流派によって細かな決まりが定められることもあります。

例えば、「肥後拵」(ひごこしらえ)と呼ばれる拵は、抜刀術の流派「伯耆流」(ほうきりゅう)に適するように作られました。片手による抜刀や居合斬りを行ないやすくするため、刀身と柄を短くしてあるのが特徴です。

所有者の威厳を示す
頭・柄巻・目貫・鍔

頭・柄巻・目貫・鍔

拵は、所有者の家格や威厳を示す道具でもあります。弥生時代に制作された刀剣の拵には、金銅の装飾が施されており、これを所有できたのは一部の権力者だけです。

そして、拵を豪華にすることで威厳を示すことは、弥生時代以降、現代に至るまで定着しました。

実際、皇族が儀式の際に佩用する美しい拵の日本刀を観れば、拵が威厳を示す道具ということが感じ取れます。

なお、江戸時代においては江戸幕府が拵の表面に朱色や金色を施したり、大きな鍔を付けたりすることを禁止したため、威厳の示し方に大きな変化が起きました。

拵全体ではなく、日本刀を腰に差したとき、他人から観られる柄の縁頭(ふちがしら:柄の先端に付ける「縁」と鍔に接する金具「頭」の総称)や目貫(めぬき:柄と刀身を固定するための留め具)、鍔などに意匠を凝らすことで、威厳を示すようになったのです。特に目貫は、戦国時代から戦勝を祈願して様々な縁起物が作られた刀装具であり、繁華街を示す「目貫通り」という言葉の語源にもなっています。

拵の変遷

拵が制作されはじめたのは、弥生時代頃からです。出土した最古の鞘は木を素材にして、赤色の漆を塗布し、宝石が付けられています。

奈良時代から平安時代までの刀剣は、公家が儀式に用いるための道具でした。当時制作された拵には、金で着飾ったり宝石を散りばめたりした華美な太刀拵が多く見られます。

鎌倉時代になると、武士による領土争いが激化。そして、拵の装飾にも変化が起きます。刀剣に実用性が求められるようになったことで、それまで主流だった豪華な拵ではなく、黒い漆で塗り込めた実用向きの拵が登場しました。

また、戦闘形式が騎馬戦から徒歩戦へ移行した室町時代には、より実用性に富んだ打刀拵が出現します。

江戸時代になると、幕府によって拵の形式に明確な規定が設けられるようになり、このとき登場したのが「大小拵」です。

大小拵は、決められた寸法で作られた打刀(大)と脇差(小)のこと。大小拵を佩用することを「二本差」と呼び、二本差は武士にとっての正装と定められました。

太刀拵

太刀拵とは

「太刀拵」は、太刀に使用する拵のこと。刃を下向きにして「帯執」(おびどり:太刀を腰帯に吊るすための金具や革の装飾)で腰から吊るす形式。馬に乗って戦うことが主流だった平安時代中期から室町時代初期の間に、様々な形式の太刀拵が考案されました。

代表的な太刀拵

飾太刀拵
「飾太刀拵」(かざりたちごしらえ)は、「儀仗大刀」(ぎじょうのたち)とも呼ばれる平安時代に制作された太刀拵のこと。高位の公家が儀式の際に用いた太刀拵で、刀身にほとんど反りがなく、拵の装飾が豪華であるのが特徴です。

なお、飾太刀拵と似た形状の刀剣に「細太刀拵」がありますが、細太刀拵は財政的な問題で飾太刀拵を用意できなかった貴族が佩用した太刀拵を指します。

飾太刀拵の飾金具を省いた形状で、飾太刀拵の佩用を許可されなかった下位の公家も使用していました。

金梨子地家紋散 蒔絵鞘 飾太刀拵
金梨子地家紋散 蒔絵鞘 飾太刀拵
鑑定区分 拵種別
重要刀装 飾太刀拵
毛抜形太刀拵
毛抜形太刀」(けぬきがたたち)は、「毛抜太刀」(けぬきだち)とも呼ばれる平安時代に制作された太刀のことで、刀身に反りがあることから、日本刀の原型と推測されています。

柄と刀身が一体となっているのが特徴で、柄にある透かし彫りの形状が毛抜き(ピンセット)に似ているため「毛抜形」と名付けられました。

なお、毛抜形太刀拵には儀仗用と兵仗用(ひょうじょうよう:実戦用の武器)が存在したと言われており、兵仗用の毛抜形太刀のことを「衛府太刀」(えふだち)と言います。

金沃懸地鞘 毛抜形太刀拵 大切羽付鍔
金沃懸地鞘 毛抜形太刀拵 大切羽付鍔
鑑定区分 拵種別
重要刀装 太刀拵
糸巻太刀拵
「糸巻太刀拵」(いとまきのたちごしらえ)は、室町時代に制作された柄と鞘の上部を同じ素材の組紐で巻く渡巻(わたりまき)にした太刀拵のこと。

8代将軍「足利義政」の頃からはじめられたと推測されており、僧侶などから将軍への献上品に用いられました。また、戦国時代になると「陣太刀拵」という名称が付けられた糸巻太刀拵も登場します。

「陣太刀拵」は、贈答品として用いられた太刀拵で、拵に使用する金具や糸巻がより豪華になっているのが特徴です。

金梨子地銀杏紋散蒔絵鞘 糸巻太刀拵
金梨子地銀杏紋散蒔絵鞘 糸巻太刀拵
鑑定区分 拵種別
保存刀装 太刀拵
兵庫鎖太刀拵
「兵庫鎖太刀拵」(ひょうごぐさりたちごしらえ)は、「厳物造太刀」(いかものづくりのたち)とも呼ばれる鎌倉時代末期に制作された太刀拵のこと。

格式の高い武家の間で流行した拵で、帯執と猿手(さるで:柄頭を保護する冑金[かぶとがね]に付ける金具)の素材に、針金で編んだ「兵庫鎖」を用いているのが特徴です。

打刀拵

打刀拵とは

打刀拵は、打刀に使用する拵のこと。刃を上向きにして腰の帯に差す形式で、徒歩戦が主流となった室町時代に制作が開始されました。

実用性重視だった戦国時代においては、拵に装飾が施されることはほとんどありませんでしたが、江戸時代になってからは美術品としての価値を高める様々な形式の拵が作られます。

代表的な打刀拵

肥後拵
肥後拵」は、茶聖「千利休」に師事した戦国武将「細川忠興」が考案した拵のこと。

刀装の各部位に茶の「詫び寂び」を反映したような渋さが加味されており、刀身や柄は抜き打ち(不意を突いて斬ること)をしやすいように短くなっているのが特徴です。

なお、肥後拵にはもうひとつ「江戸肥後拵」と呼ばれる拵があります。

江戸肥後拵は、幕末時代に制作された拵で、江戸を中心に流行したことから命名されました。

黒石目地鞘 肥後拵(刀 銘 源正雄 文久三年八月日)
黒石目地鞘 肥後拵(刀 銘 源正雄 文久三年八月日)
鑑定区分 拵種別
打刀拵
天正拵
「天正拵」(てんしょうこしらえ)は、天正年間(1573~1592年)頃に作られた実用性重視の拵のこと。華美な装飾が施されることのない拵で、鞘には朱漆や黒漆を施し、柄頭には「角頭」(つのがしら:角製の柄頭)が用いられているのが特徴です。

なお、天正拵は時代や地域によって多様化したため、各刀装具の形状も様々。共通点は、堅牢性を高めた機能的な作りであること。

また、派手な装飾を施していないことが、かえって気品を高めています。

溜塗鞘 黒漆鮫着燻皮巻天正拵
溜塗鞘 黒漆鮫着燻皮巻天正拵
鑑定区分 拵種別
打刀拵
薩摩拵
「薩摩拵」は、幕末時代に薩摩藩士が用いていた、装飾がほとんど施されていない実用性重視の拵のこと。

剣術流派「薩摩示現流」(さつまじげんりゅう)に適した拵で、「柄の形状が長い上、刀身の反りとは反対側に反っているように見える」、「鍔が極端に小さい」などが特徴として挙げられますが、特に「返角」(かえりづの)の形式が他の拵とは異なっています。

返角は、鞘から刀身を抜く際、腰から鞘が抜けないように帯に引っ掛ける留め具のことで、鉤(かぎ)の形をしているのが一般的です。

一方で薩摩拵の返角は、丸みを帯びた突起状、またははじめから付いていないことがありますが、その理由は薩摩示現流の戦法が関係しています。

薩摩示現流は、実戦において鞘に収めたまま日本刀を帯から抜き、相手へ斬りかかるという戦法を採ることで有名です。

最初の一撃にすべてを懸けるこの戦法では、返角によって鞘を帯に引っ掛ける必要がないため、返角が独特の形状になったのではないかと言われています。

黒石目地塗鞘 薩摩拵
黒石目地塗鞘 薩摩拵
鑑定区分 拵種別
打刀拵
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