刀剣を鑑賞する

刀剣の地鉄とは

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刀剣を鑑賞する上で、「地鉄」(じがね)の美しさに気付くことは、とても重要です。地鉄を観ると「刃文」や「姿」と同様に、その刀剣が作られた時代や流派、制作した刀工を見分ける決め手となります。刀剣の地鉄について、詳しくご紹介します。

日本刀の地鉄の見方について、詳しくご紹介します。

地鉄とは

地鉄

地鉄

地鉄」(じがね)とは、「鍛肌」(きたえはだ)の模様のことです。別名は「地肌」(じはだ)。

地鉄の模様は、刀剣の原材料である「玉鋼」(たまはがね)を「折り返し鍛錬」(鉄を熱して打ち延ばし、折り返して2枚に重ね、さらに打ち延ばす作業を何度も繰り返すこと)することによって生まれます。

折り返し鍛錬が行なわれるのは、平均で約15回。これにより地鉄は32,768枚もの薄い鉄層となり、衝撃抗力が増し、強度は約2倍になると言われているのです。

そんな折り返し鍛錬の回数や玉鋼の産地によって、地鉄の模様や地鉄の色には顕著に違いが生じます。したがって、刀剣が作られた地域や流派、刀工の個性を楽しむことができるのです。

地鉄を鑑賞するためには、刀剣の平地に注目すること。平地とは、刃文鎬筋(しのぎすじ)の間です。刀剣を手に取って、光に反射させることによって、肌目模様を確認することができます。

「日本刀の作り方(制作方法)」をはじめ、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

折り返し鍛錬・焼き入れ

折り返し鍛錬・焼き入れ

地鉄の種類

地鉄の模様は、木目に例えられるのが一般的です。

板目肌」(いためはだ)、「柾目肌」(まさめはだ)、「杢目肌」(もくめはだ)など、肌目模様によって、数種類に分類されます。しかし、一様な肌目模様になることはほとんどなく、板目に柾目が交じるなど、複合で現れる場合が多いです。

そのため、細かく分けると、模様の数は約10種類以上。まずは代表的な5種類を覚えましょう。

板目肌

板目肌

板目肌

板目肌とは、木材の板のような模様のこと。

大模様の肌を「大板目肌」(おおいためはだ)、小模様を「小板目肌」(こいためはだ)と言います。

大板目肌は「相州伝」(そうしゅうでん)に多く、小板目肌は「山城伝」(やましろでん)や「備前伝」(びぜんでん)に多いと言われています。

柾目肌

柾目肌

柾目肌

柾目肌とは、木を縦に切ったような、真っ直ぐな模様のことを言います。

純粋な柾目だけの物は少なく、ほぼ板目流れ、または柾目の一部に板目が交じり、「大和伝」(やまとでん)に多いと言われています。

柾目肌は最も古い鍛肌であり、刀剣以前の「上古刀」(じょうことう)の多くが柾目肌で、刀剣の一番古い流派である大和伝がこの作風を継承しました。

太刀 無銘 千手院
太刀 無銘 千手院
無銘
時代
鎌倉時代後期
鑑定区分
特別重要刀剣
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

杢目肌

杢目肌

杢目肌

杢目肌とは、樹木の年輪のような模様のこと。

多くは板目肌と杢目肌の複合で、「小杢目肌」は相州伝開祖の新藤五国光(しんとうごくにみつ)など名工の刀剣に見られます。

また、杢目肌は備前伝の「応永杢」や武蔵国下原派の「如輪杢」(じょりんもく)としても確認できます。

綾杉肌

綾杉肌

綾杉肌

綾杉肌」(あやすぎはだ)は、波のうねりのような模様の物。

柾目肌の変形であり、出羽国(現在の山形県秋田県)の刀工「月山」(がっさん)の作品に多く、「月山肌」(がっさんはだ)とも言われています。

刀 銘 月山
刀 銘 月山
月山
時代
室町時代
鑑定区分
特別保存刀剣
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

梨子地肌

梨子地肌

梨子地肌

梨子地肌」(なしじはだ)とは、小板目肌あるいは小杢目肌がさらに細かく詰んでいる状態のこと。

梨の実を切ったように、細かく詰んで潤って見えることから名付けられ、粟田口派に多く見られる地肌です。

なお、小杢目肌が細かい地肌には「小糠肌」(こぬかはだ)もあり、米の糠のように粒が揃って潤いがある状態のことを言い、肥前刀に多く見られます。

刀 無銘 粟田口(伝国吉)
刀 無銘 粟田口(伝国吉)
無銘
時代
鎌倉時代中期
鑑定区分
特別重要刀剣
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

地中とは

地中

地中

鍛え肌とは別に、地鉄には刃文のような各種の働き(地肌や刃中に動きや変化のあること)が見られ、これを「地中」(じちゅう)と言い、「地景」(ちけい)や「地沸」(じにえ)、「映り」(うつり)など、全6種類です。

刀身に「焼入れ」を行なう際に、焼刃土を盛る量や厚さ、素材にひそむ微妙な組成の偏りによって、地鉄に地中(模様)が現われると考えられます。

地鉄に地中が入ることで、深みのある美しさを作り出すことができるのです。

地景

地景

地景

地景とは、焼き入れの際、物理的変化によって地中に現れる筋状の働きのこと。刃中に現れる金筋、稲妻と同じです。

地沸

地沸

地沸

地沸とは、ポッと目に見える粒子のこと。刃文に現れる物を「」(にえ)、地鉄に現れる物を地沸と呼びますが、同質の物です。

映り

映り

映り

映りとは、息を吹きかけたように白く見えるもの。

地映り、棒映り、牡丹映りなどがあり、性質の異なるものに白気映りがあります。特に備前刀に多い働き。

刃文の影が映ったように黒っぽく見える、乱映り(影映り、丁子映り)もあります。

地斑

地斑

地斑

地斑」(じふ)とは、強弱のある地沸がからみあって、複雑なまだら模様になった物。

湯走り

湯走り

湯走り

湯走り」(ゆばしり)とは、刃縁から沸や匂が地中に流れ込むように連なり、激しく流動的な模様になった物。

地沸が一部分だけに強くついている所で、輪郭がはっきりせず星屑のように集まって観えます。

沸こぼれ

「沸こぼれ」(にえこぼれ)とは、沸が刃線を越えて、飛焼状あるいは湯走状に地中にまで及び、まだらになった物を言います。

地鉄の鑑賞用語

地鉄を鑑賞する際に、ぜひ知っておいてほしい用語があります。それは、次の3つです。

肌立つ

肌立つ

肌立つ

鍛肌(地肌)の模様がはっきりしているという意味と、研ぎ減って肌が荒れているという意味があります。

肌詰む

鍛肌(地肌)の模様がきめ細かいこと。

ざんぐり

「ざんぐり」とは、地鉄が細かく詰まらず、鍛え肌の模様がよく現れ、荒れたように観えること。

堀川国広」(ほりかわくにひろ)一門の地鉄を鑑賞するときに用いられることが多い。

堀川国広は、「新刀の祖」と呼ばれる人物で、安土桃山時代から江戸時代初期に活躍。相州伝と美濃伝を習得し、「堀川物」と呼ばれる新様式を確立しました。

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