日本刀の名刀

位列とは

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位列とは、刀工を技量の優劣によって決めた順位のことです。刀工を格付けした書籍は複数あり、その書籍が書かれた時代によって選定された刀工が異なっているのが特徴。ここでは、代表的な書籍と、そのなかでどのように位列が付けられているのかをご紹介します。

文明銘鑑(ぶんめいめいかん)における位列

古今銘鑑大全

古今銘鑑大全

「文明銘鑑」とは、正式名称を「文明十年銘盡」(ぶんめいじゅうねんめいづくし)と言い、1478年(文明10年)に刊行された古剣書のこと。刀工に順位付けをし、それを「位列」と呼んだ最初の刀剣書として知られています。

本書は、「右衛門三郎」と言う人物が代付け(価格を決めること)し、順に並べて、さらに「右衛門尉藤原常民」(うえもんのじょうふじわらじょうみん)と言う人物が1478年(文明10年)2月17日に筆写しました。

本書では「上々」が最上位で、そのうち「代100貫」として「粟田口吉光」、「三条小鍛冶宗近」、「粟田口久国」、「相州正宗」、「粟田口国綱」、「豊後行平」の6工が選出されており、次に「100貫するは稀なるべし」として「粟田口国吉」の他、「菊一文字」(きくいちもんじ)や「三池光世」(みいけみつよ)などの7工が挙げられています。

文明銘鑑ではこの他にも「中上」、「中」、「下上」、「下」と順に位列が付けられており、この位付けの仕方は室町時代から目利きの家として知られた「竹屋家」でも用いられました。なお、同じ位付けでも1611年(慶長16年)に刊行された「古今銘鑑大全」では、もっと複雑化しています。はじめに「重」、「軽」、「能」の3つに分けたあと、それぞれをさらに中上、上、下上、下などに分類しました。

新刀弁疑(しんとうべんぎ)における位列

新刀弁疑(慶長以来新刀辨疑)

新刀弁疑(慶長以来新刀辨疑)

「新刀弁疑」(しんとうべんぎ)とは、正式名称を「慶長以来新刀辨疑」と言い、1777年(安永6年)に刊行された刀剣書のこと。

著者は江戸時代後期の武士で刀剣研究家でもあった「鎌田魚妙」(かまたなたえ)。1777年に刊行されて以降、同年のうちに第5刷が刊行され、1779年(安永8年)に第7刷、1781年(安永10年)に第8刷、1784年(天明4年)に第9刷が出版されるほどの人気を集めました。

本書は、「新刀書の最高峰」との誉れが高く、慶長年間(1596~1614年)以後から刊行時までに作刀された700振を超える刀剣についての押形と解説、1200名にも及ぶ刀工の系図や履歴、作風、技術の巧拙による評価を掲載。現在、慶長以降に作刀された刀を「新刀」と呼ぶのが一般化していますが、この定義は本書によって付けられました。

新刀弁疑では、2巻と3巻で位列が示されており、ランクが高い順に「上々作」、「上作」、「上之下」、「中之上」、「中之中」、「中之下」と分けられているのが特徴。一部内容はインターネット上で公開されているため、閲覧することが可能です。

本朝鍛冶考(ほんちょうかじこう)における位列

本朝鍛冶考

本朝鍛冶考

「本朝鍛冶考」(ほんちょうかじこう)とは、1796年(寛政8年)の幕末時代に刊行された刀剣書のこと。著者は新刀弁疑を著した「鎌田魚妙」です。

本書の位列は「上」を「子」、「丑」、「寅」、「卯」。「中」を「辰」、「巳」、「午」、「未」。「下」を「申」、「酉」、「戌」、「亥」の十二支に分け、そこからさらにそれぞれを上、中、下の3段に分類。つまり「36階級」に分ける位付けがされています。

また、本書は各刀工がどのような人物で、代表作にはどのような刀があるのかも収録されているのが特徴。本書は現在、「国立国会図書館デジタルコレクション」でデジタル化され、公開されているため、インターネットに接続できる環境があればいつでも、誰でも閲覧することができます。

「日本刀工辞典」における位列

日本刀工辞典

日本刀工辞典

「日本刀工辞典」とは、1937~1938年(昭和12~13年)に刊行された刀剣書のこと。著者は刀剣研究家の「藤代義雄」、及び研師の「藤代松雄」。「新刀編」と「古刀編」の2冊が存在し、著名刀工の代表的な作品の押形をまとめた辞典となっています。

そして、本書は従来存在した刀剣書とは異なり、独自の視点に基づいて刀工の位列が掲載されているのが特徴。

本書における位列は、ランクが高い順に「最上作」、上々作、上作、「中上作」、「中作」の5段階が存在。また、「古刀編」における時代は「古刀」(938~1318年)、「中古刀」(1319~1461年)、「末古刀」(1462~1596年)に分けられ、新刀編では新刀(1596~1763年)と「新々刀」(1764~1875年)に分けられており、それぞれの時代に活躍した刀工を位付けしています。

現代刀匠の位列

栗原彦三郎昭秀全記録

栗原彦三郎昭秀全記録

美術品として制作されることが認められるようになった現代でも、「現代刀匠」の位列が存在。1942年(昭和17年)に「現代刀匠の暫定位列表」を定めたのは、現代刀保存の立役者として知られる「栗原彦三郎」です。

栗原彦三郎は帝展や共進会、新作日本刀展覧会などの得点表・受賞歴などを参考にして300余名の現代刀匠の位列を作成。のちに「栗原彦三郎伝記刊行会」が「栗原彦三郎昭秀全記録~日本刀を二度蘇らせた男~」と言う著書内でその位列を公開しました。

ランクが高い順に「神品の列」、「貴品上位」、「貴品の列」、「上工の上位」、「上工の列」、「良工の上位」、「良工の列」の7段階に分類されています。また、現代刀匠の位列はこの他にも「一位」、「二位」、「三位」などで分類されることも。

最もランクが高い一位には、「人間国宝」として選定された「高橋貞次」(たかはしさだつぐ)や「宮入昭平」(みやいりあきひら)、「隅谷正峯」(すみたにまさみね)などが選出されています。

脇差 銘 龍泉入道貞次(花押)
脇差 銘 龍泉入道貞次(花押)
彫同作
龍泉入道貞次
(花押)水口義誉還暦之秋
鑑定区分
特別保存刀剣
刃長
40.9
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

大刀 銘 宮入昭平
大刀 銘 宮入昭平
宮入昭平
伊勢神宮御神宝控打之
鑑定区分
保存刀剣
刃長
78.8
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

刀 銘 傘笠正峯作之
刀 銘 傘笠正峯作之
傘笠正峯作之
乙丑年八月日
鑑定区分
保存刀剣
刃長
74.8
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕