日本人特有の思想である「武士道」。新渡戸稲造は著書「武士道」で日本人の精神や倫理観、道徳を海外の人に伝えました。現代の作家・クリエイター達はこの武士道をそれぞれの解釈で作品に落とし込んでいて、漫画やゲーム、大河ドラマなどから武士道精神を感じることは少なくありません。また、武士道は現代の日本にも受け継がれており、日本人の礼儀正しさやマナーにもかかわりがあります。
「海外に伝えたい日本人の武士道」では、そんな武士道について詳しくまとめました。武士道の考え方から、漫画や大河ドラマに見られる武士道、武士道精神を受け継いだ日本のマナーなどを解説しています。武士道について深く学びたい方におすすめです。

武士道という考え方

アニメや映画、ゲームなどを通して日本に関心を抱く海外の人は着実に増え続けています。海外の赴任先や旅行先、国内での出会いを通して、国境を越えて日本や日本文化に関心を抱く人と交流する機会も多くなりました。国立博物館や美術館へ行くと日本の歴史や書画、陶磁器や漆器、刀剣、甲冑等などへの関心を通して、それらの背景にある精神性に興味を抱く海外の人も増えていることを実感させられます。 そこに見られるのはニンジャ、サムライといったキャッチーな日本イメージとは一線を画する、禅や武士道、あるいは能・狂言などに見られるより深い精神文化への傾倒です。そこで今回は「武士道」についてご紹介したいと思います。

武士道について

新渡戸稲造

新渡戸稲造

わが国で近年「武士道」に関心が寄せられたのは、1984年(昭和59年)から2004年(平成16年)まで流通した新5,000円札の「顔」に「新渡戸稲造」(にとべいなぞう)の肖像(56歳当時)が登場したときでした。

そのとき、日本人の精神性や道徳、倫理観を海外の人に伝えるために武士道を上梓(じょうし:図書を出版すること)した人物であると、多くの人に知られることとなったのです。

そもそも「武士道とは何か?」海外の人からいきなり聞かれても、答えに窮する人がほとんどではないでしょうか?新渡戸稲造も著書・武士道の中でふれているように、それは体系化され、明文化されたものではないがゆえに、我々日本人にも言語化して定義することが難しい「掟」なのです。

ところが武士道を読んでみると、私達が日頃疑問に思う日本人の「なぜ?」が沢山ちりばめられていることに気付かされます。そこにあるのは身分を問わず「自分らしく生きるための人生の選択」であったり、「他者への思いやりや気遣い」であったりするからです。

本コンテンツでは武士の起源等にもふれつつ、戦国時代の「勝つことこそ至上」「戦うべきときに戦う」という直裁な行動原理から、封建時代の「主君への忠誠」を通して、藩や民衆のために行動する社会性を持つに至る背景、さらには武士道が、武士達が社会の規範となるべく己を律する掟へと進化する過程についてもふれています。

封建時代に成熟した武士道は、西洋の騎士道にも通じる「社会的責任」を担う人々が培った責任のあり方や行動規範となり、やがては武士という階級を超えて、あらゆる階層の日本人に共有され、日本人の倫理観や道徳観にも影響を与えました。

武士道の普遍性と共感性

新渡戸稲造が武士道を上梓した背景には、世界の人々に、より深く日本人のことを理解して欲しいという想いがありました。幕末維新の攘夷派による外国人殺傷事件や日清・日露戦争の勝利によって世界が極東の日本へ関心を向けはじめた当時は、日本と日本人に対して多くの誤解が生じていることを日本の知識人達は危惧していたのです。

そして、自ら「われ太平洋の橋とならん」(日本と外国を結ぶ太平洋の架け橋になりたい)と考えた新渡戸稲造は武士道を、「岡倉天心」(おかくらてんしん)は「茶の本」を出版。新渡戸稲造よりも少し若い世代の「鈴木大拙」(すずきだいせつ)は、のちに「禅と日本文化」を海外に広めます。

新渡戸稲造は武士道を通して、日本人にも世界の人と同様に尊重している普遍的な道徳観や倫理観、共有感覚があることを伝えようとしました。

一方で封建時代の改めるべき慣習、特に農民や町民と比較して、武家社会における女性達が置かれた抑圧的な立場には、自身の視点から批判的な論考を加えると共に、武家社会の女性達は決して封建社会の犠牲ではなく、自発的精神によって家や自身を守ることに努めたのだと一定の理解を求めています。

新渡戸稲造が生涯を共にした婦人は米国人「メアリー・エルキントン」(日本名・新渡戸万里子)であり、東京女子大学では学長、津田梅子の津田塾では顧問を務めるなど、近代日本の女子高等教育にも積極的に取り組み、国際連盟事務次長時代には国際連盟の規約に人種的差別撤廃提案をするなど人権意識も先進的でした。

2021年(令和3年)、世界経済フォーラム(WEF:スイス・ジュネーヴ州)が発表した「ジェンダーギャップ指数」において、日本はいまだに156ヵ国中120位と主要7ヵ国(G7)中最下位、アジアの主要国よりさらに下位にあるのが現状です。新渡戸稲造は100年以上前から、はるかに開かれた視野で「その先の日本」を見つめていたのです。

また、新渡戸稲造は軍部の暴走や偏狭なナショナリズムの台頭にも危惧を抱いていました。1924年(大正13年)には次のように記しています。

「僕は寧ろ我国民性に如何なる欠点あるかを顧みるのが国を偉大にする一の方法でないかと思う。言葉を換えて言えば反省、自己の過を知る事、己の短所を自覚すること、(中略)これがなければ国民は慢心するのみである。慢心は亡国の最大原因である」

「真の愛国心」~国を偉大にする一の方法~

海外の人々へ伝える以前に、武士道は現代に生きる私達日本人にも、いまだに大きな示唆を与えてくれるのです。

現代に伝わる武士道

武士達が育み受け継ぎ、新渡戸稲造らが伝えようとした武士道を、現代に生きる我々は様々な媒体でふれることができるようになりました。

彼らが残した書籍は当然ながら、それを自分なりに解釈した現代の作家やクリエイターによって作られた作品には枚挙にいとまがありません。「戦国BASARA」「戦国無双」といった派手なアクションゲーム、「シグルイ」や「鬼滅の刃」(きめつのやいば)といった漫画、日本の偉人を紹介する大河ドラマなど、創作物の魅力的な登場人物から興味を持って武士道精神を学ぶ人も増えています。逆に、武士道に対する理解が深まれば、「疑問に思っていたあのキャラクターのあの行動、実は武士道精神に則ったものだったんだ!」といった、新しい発見ができるかもしれません。

座布団や畳の使い方ひとつ取っても、当時の武士のマナーが隠れている

座布団や畳の使い方ひとつ取っても、当時の武士のマナーが隠れている

また、日本人の作法やマナー、広く親しまれている武道も、武士道の考え方によって培われてきたものが多数存在します。

日本人はこれを当然のこととし、特に疑問もなく行っていますが、その独特かつ厳格なふるまいは、海外の人から高い評価を得ると共に理解しがたく、疑問に思われている部分も多々あります。

普段から何気なく行っている所作の由来を知ることで、武士道が身近に感じられるようになれば、外国人からの疑問に答えることもできるようになるのではないでしょうか。

武士道の基礎知識

「武士道の基礎知識」では、日本人特有の考え方である武士道についてまとめました。武士道についての詳細な解説、海外から見た武士道、大河ドラマやアニメ・漫画から見られる武士道などの内容を掲載。「武士道の歴史を知りたい」、「現代に残る武士道について調べたい」という方におすすめです。

名古屋刀剣博物館/名古屋刀剣ワールド(メーハク)は、愛知県名古屋市中区栄にある刀剣の博物館です。
「海外に伝えたい日本人の武士道」では、海外からも注目されている「武士道」についてご紹介。武士道の定義や歴史、現代でも見られる武士道精神などについて解説しています。
博物館は最大200振の刀剣が展示可能。国宝や重要文化財、重要美術品、特別重要刀剣といった貴重な刀の数々をご覧頂けます。さらに、甲冑は約50領、浮世絵は約150点を常設展示。日本刀、鎧兜、浮世絵、武具といった歴史に関する様々な美術品を楽しむことができる博物館です。
また、博物館や美術館の魅力のひとつである企画展示会もございます。テーマに沿った刀や剣、甲冑、浮世絵を展示し、ここでしか観ることができない特別な展示会を開催。名古屋にお越しの際は、名古屋刀剣博物館/名古屋刀剣ワールド(メーハク)へのご来館をお待ちしております。

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