火縄銃の基本

火縄銃の仕組み

文字サイズ

「火縄銃」は日本における原始的な火器で、戦国時代末期から戦場で使われていた武器です。刀剣や弓矢に代わり主力武器として広まった火縄銃の仕組みをご紹介すると共に、火縄銃以降に発展した銃火器との違いについて見ていきましょう。

  • 「火縄銃とは」をはじめ、武具(馬具、弓矢、火縄銃、など)に関する基礎知識をご紹介します。

  • 火縄銃・短銃・大筒・和製西洋式銃写真
    生産地や流派によって様々な個性を持つ火縄銃・大筒をご覧頂けます。

火縄銃の基礎知識

火縄銃の構造

火縄銃」の基礎知識として、その機構は大きく分けると、「銃口」と細長い「銃身」、そして発火装置である「からくり部」の3つから成り立っています。では、各箇所の主な部品の名称と役割を見ていきましょう。

銃口

銃口

銃口

巣口(すぐち)

火縄銃の銃口部分の呼び名。

火縄銃の口径は、小振りな銃で直径4~5mm、大きな銃は8~9cmと様々な種類が作られています。

柑子(こうじ・こおり)

銃口を囲む外側の装飾部分。一般的に八角形や丸の形状で作られています。

カルカ

銃身の底まで弾薬を詰めるときに使う装填用の棒です。

銃身

銃身

銃身

(つつ)

火縄銃の銃身部分の呼び名。また、銃身を支える銃床(じゅうしょう)は台木(だいぎ)と呼ばれています。

前目当(まえめあて)・先目当(さきめあて)

標的を定める2つの照準装置。銃身の手前側に設置されているのが前目当で、先端側を先目当と呼びます。

からくり部

からくり部

からくり部

火ばさみ

火種となる火縄を挟む部分です。

火皿

点火薬を入れる受け皿。

火蓋(ひぶた)

火皿を覆う安全装置です。火蓋を開けることを「火蓋を切る」と言います。

火縄銃を発砲する直前に火蓋を開けることから「戦いの火蓋を切る」という言葉が生まれました。

引金(ひきがね)

発砲する際に一番はじめに引く金具。火縄銃では、地方や流派によって様々な形状の引金が作られています。

用心金(ようじんがね)

引金の周りに付けられている保護器具です。

弾き金(はじきがね)

火ばさみをばねの力で弾いて着火させる金具。「毛抜き金」とも呼ばれました。

このように火縄銃の構造は、引金を引くとからくり内部の押え金が動き、弾き金のばねによって火縄が火皿に落ちることで、点火薬に火が付く仕組みになっています。そこから筒内部の発射用火薬に火が伝わり、弾丸が発砲されるのです。

火縄銃の火薬

火縄銃の火薬は、硝石(しょうせき:硝酸カリウム)・硫黄・木炭を原料としています。これらの粉末を5:2.5:2.5の割合で混ぜると火薬の完成です。

口薬入れ

口薬入れ

筒内部の発射用火薬は「玉薬」(たまぐすり)と呼ばれ、銃口から弾丸と共に詰められます。

また、火皿に盛る点火薬は「口薬」(くちぐすり)と呼ばれ、点火しやすいように火薬をさらに細かく粉末状にして用いたのです。

火縄銃を扱う武士達は、弾丸と火薬を専用の袋や容器に入れて持ち運んでいました。

また、玉薬と口薬も見分けがつくように専用の火薬入れに分けて保管していたと言われています。

江戸時代には、多種多様な火薬入れが職人によって作られました。刀剣を彩る華やかな刀装具が流行したように、武士達は火縄銃に用いる小道具にも気を使っていたのです。

  • 刀剣とははどのようなものか解説します。

  • 「日本刀の基本解説」をはじめ、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

  • 刀装具の解説はどのようなものか解説します。

  • 「日本刀と刀装具」をはじめ、日本刀に関する基礎知識をご紹介します。

  • 現代に残る武士の風習
    現代まで残ってきた武士の風習をご紹介します。

火縄銃の弾

弾丸を作る玉型

弾丸を作る玉型

火縄銃の弾丸は、不純物の少ない鉛を原料として作られています。

この弾丸となる「丸玉」を作るのに必要なのが、「玉型」と呼ばれるペンチのような見た目の器具。

玉型の先端部分には、四角い箱のような塊があり、持ち手を握って開けると内部は球状になっています。

丸玉の作り方は簡単です。熱して溶かした鉛を玉型の先端のくぼみに流し込み、箱のなかに鉛を閉じ込めます。鉛は箱のなかですぐに冷えて固まり、球状に型取りされた丸い鉛の玉を成形。くぼみから飛び出た鉛部分を綺麗に切り揃えれば、火縄銃の弾丸・丸玉の完成です。

火縄銃の予備知識

日本に伝わったマッチロック式のマスケット銃

火縄銃は、戦国時代に日本に製造法が伝来したあと、引金にバネを用いる「瞬発式火縄銃」として日本独自の発展を遂げました。日本の火縄銃の原型となったのが、15世紀頃からヨーロッパで用いられていた「マッチロック式」の「マスケット銃」です。

マッチロック式とは、日本名で火縄式と呼ばれ、前述の通り引金を引くとからくりが作動して点火する構造のこと。マスケット銃は、銃火器が開発された初期に軍隊で使われていた前装式(ぜんそうしき:銃身の先端側から銃弾や火薬を装填する方式)の小銃の呼び名となっています。このマッチロック式で発砲する初期のマスケット銃が日本に伝来し、火縄銃として全国に広まっていったのです。

日本に火縄銃が伝来する以前、ヨーロッパではマッチロック式マスケット銃が開発されるまで、火縄を直接手で押し付ける「タッチホール式」の小銃が用いられていました。扱いにくいタッチホール式に代わり、マッチロック式が導入されたことで、銃火器は大きく進化を遂げたのです。

マッチロック式の大きなメリットは、タッチホール式に比べ命中率と射程距離が大きく向上することです。良質なマッチロック式マスケット銃であれば、90m先の人間に命中するほどの威力があったと言われています。しかし、衝撃で火縄の火が消えやすく、また夜戦では火の明かりから居場所が分かってしまうなどのデメリットも多くありました。

ヨーロッパでは、マッチロック式マスケット銃の改良が重ねられ、15世紀後期まで広く軍隊で使われることとなります。

「鉄砲伝来の諸説」をはじめ、武具(馬具、弓矢、火縄銃、など)に関する基礎知識をご紹介します。

ライフリング式の銃との違い

ヨーロッパで使われていたマッチロック式マスケット銃や日本の火縄銃は、銃火器の歴史上初期に誕生した武器です。世界的に火縄銃は改良が重ねられて使用され続けていたものの、根本的な扱いづらさが改善されることはありませんでした。

そののち16世紀になると、マッチロック式に代わって鋼輪(こうりん)を回転させて点火させる「ホイールロック式」や、火打石を金属に衝突させて点火させる「フリントロック式」が登場。火縄銃と比べて、片手で扱えるようになり、発砲可能な状態で持ち運べるようになったことで、より瞬発性の高い銃火器へと進化を遂げました。

ライフリング螺旋構造

ライフリング螺旋構造

そして、19世紀には銃火器の歴史に大きな変革が起こります。現代においても使われている銃の構造、「ライフリング」の誕生です。

ライフリングとは、銃身の内部に施された螺旋状の溝のこと。

この浅い溝を通って弾に回転速度をかけることで、火縄銃にはない安定かつ直進性を高めた弾道が実現しました。

ライフリングの特徴は、いわゆる「弾丸型」と呼ばれる「椎の実型」(しいのみがた)の弾が使われていることです。これは、1849年(嘉永2年)にフランス陸軍大尉の「クロード・エティエンヌ・ミニエー」が採用した弾で「ミニエー弾」と呼ばれています。

フランスでは、このミニエー弾に合わせて歩兵銃が開発され「ミニエー銃」と呼ばれるライフル銃が普及したのです。

このように、ライフリング式の銃と火縄銃は構造だけでなく、用いられる弾の形状にも決定的な違いがありました。こうしてミニエー銃は、欧米列強の国々も導入しはじめたことで、世界中で利用されるようになります。